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最上階からの話

「お前を、駆除する」

 俺は目の前にいる小太りの男、市村議員にナイフを向けた。今までの折りたたみ式のナイフとは違い、今、手にあるのは短剣に部類するやつだ。

「何故、私が?」

 市村は余裕の表情を見せているが、鼻の頭には大粒の汗が見えている。よく見ると、額にも汗がにじみ出ている。自然と、口元が緩んでしまう。

「何故、私が?」

 市村は同じ言葉をまた言った。仕方がないから、答えてやることにした。

「そんなの知るか」

「知……、誰からの依頼だ!」

「さあ?」

「わ、私が駆除される理由はどこにもない!帰れ!物騒なもんしまって、さっさとこの部屋から出ていけ!警察呼ぶぞ!」勇気を出したのか、一瞬身震いし、唾を飛ばしながら、一気に怒鳴った。

「ちっ」市村の怒鳴る声が耳障りだった。

 市村を奥にあるベッドの部屋へと追い込んだ。市村が背にしているのは一面ガラス張りの窓だ。最上階とだけあって、周りの建物が小さく見える。

 そうか。なんとなく分かった気がする。市村はこの部屋から、俺らを見下ろしている。いろんな意味で見下ろしているに違いない。そして笑う。「お前らのお金はこのお腹に蓄えておくよ」と。

「ちっ」市村の姿形が目障りだった。

さっさと駆除して、帰ろう。そう思った時だった。

「⁉」

 最初は、市村の目を見て気づいた。俺の背後を見た瞬間、瞳孔が揺れたのが分かったからだ。そして、その気配を感じた。威圧感のある、アツい空気が背中を撫でた。

 振り返るほんの一瞬。視界の端に、振り下ろされる腕が見えた。反射的に前へ跳ぶ。重い音と同時に、俺はガラス窓に身体を打った。痛みが走るが、気にしている暇は無かった。体制を立て直し、背後にいた奴を捉える。

「お前は…」

 特徴的なのは左目にできた傷。ガタイのいい男。すぐに〝あいつ〟だと分かった。

「た、助けてくれ!」

 市村が俺から逃げ出し、男の方へと駆けた。

「うるさい」

 市村が駆け寄ったと同時に、男が手に持っていたドスを突き刺した。

「え…」市村の最期の言葉だった。倒れた市村を、男は足で退けた。完全に〝モノ〟扱いをしている。

「お前が、烏山の息子か…」男はそう言って、ドスを俺に向けてきた。


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