追憶~その1~
目の前で父親が撃たれた。返せないお金は借りるなとのことだ。
高校卒業前だった俺は、行くあてもなく、とりあえず、そのまま今の家で過ごすことにした。父親は警察に引き取ってもらった。
ある日ニュースで『今月、烏山零士さんが射殺された事件で、指定組織団幹部の男が、殺人の疑いで逮捕されました』と、報道された。その後、父親がお金を借りたであろう会社も警察に摘発された。
ムカつく父親も、父親を撃ってくれた男もいなくなった。心に余裕が生まれた。もう、怯えて生活することもなくたった。俺は、高校を卒業したと同時に、家を出た。
目的も行くあてもない。家に残っていたお金を握り、ネットカフェを転々とまわり、生活していた。
お金も無くなりかけた頃。以前、坊主男を飛ばした廃ビルに行くことにした。
特に、理由は無かった。ただ、その廃ビルに行けば、何かあるのではないかと期待している自分もいた。
腐った手すりは腐ったままだ。階段を上がり、大広間に着くと、やはりいた。たぶん、自称このエリアのトップ率いる害虫の群れだろう。
躊躇なく、害虫の群れの方に近づく。当然害虫たちは、俺に気付き、警戒し、敵意を向きだす。
「おいおい、ココがどこだか分かってんのか?」群れの中の誰かが言った。
「部外者立ち入り禁止だぞ!」
「痛い目に遭いたくなかったら、お家に帰りな」
騒々しい笑いを上げる害虫の群れの背後に、トップはいた。
「お前ら、少しは静かにしろよ」群れのトップはそう言って、道を開けるよう指示した。「で、キミはだ………」
俺も驚いたが、それ以上に、そのトップも驚いていた。
「烏山か?」
「そうだ。お前は、この群れのリーダーなのか?」
「ま、まぁ、一応…」
俺は、こいつは絶対リーダーになれる奴とは思っていなかった。
「な、なんだよ烏山!なに、笑ってんだ」
「いや、別に…」あの、鵜飼の手下一号がリーダーを務めてるとは、夢にも思わなかった。
「そうだ、なあ…」俺は一つの案を思いついた。「このエリアのトップに君臨してんのか?」
「今はまだ…」
「だったらよ、俺を雇え。お前を本当のトップにしてやる」




