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記憶
車は、高級ホテルの前で停車した。
「このホテルの最上階にその部屋があるから。十五分くらいで済むか?」
「ああ」
「なら、十五分後にココな」
鵜飼を乗せた車は、俺を降ろして走って行った。
不審者に間違われぬよう装い、カウンターを通過し、エレベーターに乗り、最上階のボタンを押した。
広いエレベーターの中。一人でいるせいなのか、鵜飼との再会を果たしたせいなのか、いろいろと考えてしまう。思えば、この世界に入ってから知り合いとの再会が多い。そう思い始めると、無意識に記憶の引き出しが次々と開かれていく。
「有名人…」
名前が広まるのは良いことかもしれない。いわゆる〝ビジネス〟にとってだ。ただその分、俺自身が駆除されるリスクも高くなるはず。鵜飼も気を付けろと言っていたではないか。
一度開いた引き出しはもう閉じないらしい。記憶が連なって出てくる。
車の中でもそうだった。鵜飼の一言で、俺は口を開いた。
「なぁ、カラス。なんで、この世界で暮らし始めたんだ?しかも、ひとりで…」




