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初めての依頼

ツクツクボウシの鳴き声。風船葛の緑の滝。扇風機一つで涼しく感じる。

何も言ってないのに、冷たい麦茶に茹でたトウモロコシとお煎餅が出てくる。

 そんな田舎暮らしに憧れていた。


「あ、あそこ、ちょうちょが飛んでるよ」誰かの子供がはしゃいでる。

「ほんとだな」子供の父親だろうか、虫網を片手に答えている。

「アゲハチョウかなー」

「んー、アゲハチョウは、もうちょっと黄色いかな」

「えー、じゃあなんだろー」

「あれはね…」

 黒く見える蝶が、親子の頭上を舞っている。


「…おい、烏山!」

 運転席の方から声がした。

「寝ぼけるなよ。これから仕事だからな」

 車のエンジンによる細かい振動が、眠気を誘う。と言うより、寝ていた。あの夢の親子は誰だったのだろうか。そんなことを考えたが、すぐに消えた。

「それ、今回の内容だから」

 渡されたのはA4サイズの茶封筒だ。中から書類を引き抜き、目を通す。

「そいつの父親は春に駆除した」

 俺は、仲介人兼運転手の話が入ってこなかった。書類に集中していると言えば聞こえがいい。実際はそうではなかった。

「今回はその息子だ」


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