この夏の真実
「烏山君、大丈夫?」
「うるさい、黙れ。どういうことか、説明しろ」
「分かったから、とりあえず、ココに座って。あと、柊さん、どこ行くの?」
この時の榎本の笑顔が、怖く恐ろしいものに感じた。この場を離れようとしていた柊も、そう感じたはずだろう。
「本当に、お前、凄いな」顔が腫れている鵜飼が隣に座ってきた。柊は、少し離れたところに立ったままだ。
「じゃあ、今から説明を始めます」
そう言って、榎本はこの夏の出来事を話し始めた。
榎本の話を耳に入れながら、俺は別のことを考えていた。
『…まあ、おかげでお金入ったし…』
『…おかげでいろいろ分かったし…』
俺の知らないところで、いろんなことが起きていた。
鵜飼の場合は、俺の噂を広めて、お金をもらっていたに違いない。賞金首のように、俺に勝ったら、お金を渡すつもりだったのだろう。
榎本の場合は、鵜飼が俺の方を向いている隙に、いろいろ調べたに違いない。女子が襲われたことや、椿原のこと。さらに動画のこと。
俺は、こいつらに利用されていたのだろうか…。
話を戻すと、この夏の出来事の裏には、少し離れたところにいる、柊が絡んでいた。きっかけは、鵜飼達に襲われたこと。二回目に襲われたのは演技で、俺に近づくつもりだったらしい。俺をエサに鵜飼を倒すのか、それとも、俺に鵜飼を倒させるのか。どちらかは分からないが、そういうことだったようだ。
ちなみに、動画の件は柊が指導者だそうだ。
萩原にたかる害虫を手に入れ、たかっているところを動画で撮影し、ネットに上げ、鵜飼がやったと噂を流した。鵜飼から何も反応がなければ、同じことを繰り返すつもりだったそうだ。
今回は男を雇って、鵜飼を痛めつける予定だったらしい。というか、痛めつけた。途中で榎本が来て、俺が呼ばれて、俺が痛めつけられた。
そういえば男はどこに行ったのだろうか。男の姿はどこにも無かった。
「何故、そんなに分かったんだ?」俺は率直な意見を求めた。
「僕の情報収集力なめないでくださいよ。僕はね、地図一枚で、烏山君の家に行けますからね」
榎本は柊を連れてどこかに行った。鵜飼も気が付いたら、どこかに消えていた。
結局俺は、皆に利用されていただけだった。そんな気がする。実際にそうだとしたら、不愉快だ。ただ少しだけ、利用されてでもいいから、榎本と一緒にいたかった。そう思う自分もいた。




