目覚め
「カラス…」最初に気付いたのは、鵜飼だ。
鵜飼の声に反応して、榎本と柊が俺の方を見てきた。
「烏山君、危ない!」榎本が叫んだ。
とっさに振り返ると、メリケンサックのようなものをはめた、拳が降ってきた。
「ぐっ!」
顎を打たれた。脳が揺れる。地面に手が付いた。口元から血が垂れる。
「烏山君!」「カラス!」二人の声が同時に聞こえた。
「ちっ…」地面の砂を相手に投げつけた。
「うっ、コイツ!」
ひるんだ隙に、力を入れて立ち上がる。頭は揺れるがそのうち慣れるだろう。
相手を見た。今のところ一人だ。ガタイは大きい。格闘家なのだろうか。少なくとも、俺が今まで相手してきた奴らよりかは強い。
サックをはめ直している。間合いを詰めてきた。
来る。
右の拳を大きく振ってきた。
そんなものはめているから、遅いんだよ!
右に飛んでよける。
右脚が地面に着いた瞬間、相手の左腕が下の方からやってきた。
「⁉」
地面に着いた右脚を軸に、無理やり体をひねって、左腕をかわした。
「中学生相手にそれはないだろ」
左手にはナイフをつかんでいた。柄の部分に指をはめるタイプのものだ。
「関係ない」
「ああ、そうかよ」
どうする。この場を乗り切るにはどうしたらいい。警察は来ないのか。ああ、そうか。全員、見て見ぬふりか。
「くそっ…」
どいつも、こいつも、本当に不愉快だ!
この後、俺は何をしたのか分からなかった。頭では何も考えていない。体が勝手に動いたのか。
とにかく、気が付くと、相手は血を流して倒れていた。




