また一難
「おい、烏山!」
その声にハッとする。いつの間にか寝ていた。次の時間は教室移動なのか?
「なに、ボーっとしてんだよ!」
訳が分からない。こいつ誰だろうか。同じクラスにいたような、いないような…。
「榎本が…鵜飼と…そばに柊がいて…よく分かんないけど、烏山呼ばれて…」
「落ち着け、意味が分からない」
「いいから、体育館裏に行け!」
とりあえず、走る。珍しく、頭の中がパニックになっている。
榎本が鵜飼を呼び出すのはあるかもしれない。鵜飼に仕掛けたら、鵜飼も黙ってはいないと思うが。じゃあ、柊は何故だ?
『女の子襲ったって聞いたぞ!』
足が止まる。
あの時、言っていた女の子は柊のことなのか。じゃあ、この間は二回目になるのか。だから、一緒にいるのか。
何故、柊がいるんだ?事実だと確認するためか。
何故、俺を呼び出す?鵜飼の仲間だからか。
とにかく、急ぐことにした。榎本では、鵜飼は倒せない。
この夏で十分に分かった。鵜飼は非常にセコイ害虫だ。自分では手を出さない。集団を必ず呼ぶだろう。その集団は、柊にも必ず手を出すに違いない。
走りながら思う。体育館の裏ではいいことは起きない。だからだろうか、嫌な予感がする。
何かは分からない。ただ、俺は何のために、誰のために…。この、嫌な予感はどこからくるものなのか…。俺は分からなくなっていた。
「ゔ…」
体育館の裏に着くと、うめき声と共に、鈍い音が聞こえた。やはり。
息を切らし、膝に手をつき、顔を上げる。
「⁉」
視界に入ったのは、地面に倒れているのは、鵜飼だった。榎本がやったのか。
視線を横にずらすと、榎本は怒りに満ちた表情で鵜飼ではない方を睨んでいた。榎本が睨んでいる方へ、俺も向いた。
堂々たる立ち姿で、腕を組み、蔑んだ目で鵜飼を眺めていた。軽く巻いたロングの髪型が、生意気なお嬢様のように見える。
そこに立っていたのは、柊だった。




