虫学生の話
俺は害虫が嫌いだ。正確に言うと、一人の生徒にたかる害虫が嫌いだ。
害虫は弱い人間を見つけると一斉に集団攻撃を行い、反省は一切せず、秩序に対しては反発するものだと考えている。そんな特徴を持っている。
一人の生徒にパンを買ってこさせるのは昭和、その場でジャンプさせるのは平成初期、今はインターネットを利用したものになっている。時代の変化によって内容も変化するらしい。小学校のときは「お前のかーちゃんデーベーソー」で済んだが、今は「お前の席ねーから」になっている。かーちゃんの出る幕は無いようだ。
今、教室では害虫被害を受けている生徒がいる。名前は椿原仁。
椿原は弱々しい体型で、髪の毛で目の位置が分からない。タラコくちびるで、いつも半開き。一目見ただけで「あぁ、害虫の好物だろうな」とすぐに分かる。
生徒が害虫にたかられている時でもPTAは機能しない。何故か。それは、お茶を飲みながら、会長のママさんにゴマを擦らなければならないからだ。PTAが機能するときは事が起きた後だ。
教師はどうか。それもダメだ。自分は痛い目に遭いたくないと考えて、見て見ぬふりをする。たとえPTAに何か言われたとしても、適当にそれらしい言葉を並べれば、事が収まると信じているからだ。
クラスメートもそうだ。たかられる人間がいけないと考えて、害虫はいないものとする。
だから、害虫はここぞとばかりにいい気になる。本当に不愉快だ。