生活魔法?なにそれwwwと笑われた被召喚者。
いい加減労働から解放されたいですね。
夢の未来を考えてたら、思い付いた作品です。
「……では私には用は無い。と言う事で良いですね?」
やや声を張った女声にその場にいた貴顕達は一瞬ピタッと静まり返り。
「「「「ワッハハハハハハ!」」」」
それからドッと笑った。
……貴顕達。
王侯貴族に高位宮廷官僚、騎士、魔法使いなどなど。そして彼らの中心にいるもう1人の被召喚者。
認定を受けたばかりの聖女が笑いを押し殺して口を開いた。
「仕方ないじゃない。私がURの“聖女”になったのに対して。あなたの特典はNもドNの“生活魔法使い”だったんだから。」
聖女が嬉しそうな笑顔で言えば。
再び周囲はワッと笑った。それはタチの良い笑いではなく他者を見下す空気が籠っていた。
「生活魔法?火付をしたり、下々でも使えるこれと言って特徴の無い魔法だな。」
「わざわざ膨大なコストを掛けて呼び出せたのが。ハッ!生活魔法使いとは。」
いやあからさまに蔑む言葉も聞こえる。
「ちょっと待って!この世界唯一の私の同郷なんだから余り酷い事は言わないで下さいね。」
「……おぉ、これは失礼した。」
「……さすが聖女様なんとお優しい。」
庇っているのは間違い無いが。貴顕達の反応に聖女は嬉しそうにしている。
……打ってつけのドアマット。
そんな声が聴こえてきそうな笑顔を聖女は浮かべていた。
「同郷。……まぁ、そう言えばそうかもね。その制服は見た記憶があるかもだし。」
「でしょう?◯◯女子高有名だからね。……それにしても。」
言って聖女は生活魔法使いを上から下までジロジロ眺めた。
「異世界に来てまでジャージは無いでしょ、ジャージは!」
「仕方ないでしょ?家で寛いでたところだったんだから。」
聖女がいかにも高級そうな仕立ての有名女子高制服だったのに対し、なんと生活魔法使いはライトグレーのジャージ姿だったのだ。
「聖女殿その、ジャージと言うのは?」
「……え?フフフそれはね。」
((((……ブハハハハハハハ!))))
運動着と聞いて貴顕達は堪え切れないように笑った。説明すればこうなるのは分かっていたはずだ。この辺りを見るに聖女の地黒な性格が垣間見える。
「……では私には用は無い。と言う事で良いですね?」
再び上がった生活魔法使いの声にはやや苛立ちが籠っていた。
「そうだな。」
「確かに用は無い。」
今度は貴顕達は笑わず面倒くさそうに頷いた。
「貴女も私に用は無さそうね。拉致されたのを喜んでるみたいだし。」
「拗ねない、拗ねない。ここ身分社会なんだから変な事言ってると身の危険よ?」
苦笑いしつつ聖女が言えば生活魔法使いは溜め息を吐いた。
「……はぁ〜。こんなお年寄りを置いてくなんて気が引けるんだけど。……しょうがないか。」
「年寄り?なに言ってんの、あなた私と同じくらいの……。」
それに答えず生活魔法使いは首を軽く横に振る。
【フライバイ】
「……え?」
「「「「……え?」」」」
唱えれば彼女はスッと何かに腰掛けた姿勢で1mほど宙に浮いた。
(……飛翔魔法だと?)
(……大魔法だぞ!)
(……一言で……だと!? 」
【サモン:オズワルド】
『何か用かなエリカシア?』
今度は7:3ワケの黒スーツ高身長イケメンが彼女の傍らに出現する。彼は光を発する黒瞳で周囲を見渡した。
『なるほど。原始世界に来てしまったようだね。』
一瞬で状況を把握したらしいオズワルドは穏やかな笑顔で。生活魔法使い……エリカシアに話しかけた。
(……しょ、召喚魔法だと!? )
(……ひ、一言唱えただけだぞ!)
(……原始世界?)
驚愕する人々を置いて2人はゆったり会話を続ける。
「そうなのよ。」
『よく私を呼び出せたね。』
「いや、なんか“生活魔法”とか言うのが使えるみたいなの。」
それを聞いたオズワルドは晴れやかな笑顔になった。
『ハハハ“生活魔法”か!それは良かった。ならばなにも問題は無いね。連時空素源量子サーバーが稼働している限り。何者もエリカシアを傷付けられはしない。……おや?』
話していたオズワルドはふと聖女に目を向けた。
『おや?おやおやおや。これは珍しい!なぜスズキ=ハナさんがこんなところに居るんだ?』
「…………え?なんで私の名前?」
突然見知らぬイケメンにフルネームを呼ばれた聖女……ハナは異世界召喚以上に驚いていた。
『なぜって、私のライブラリに君の記録が残っていたからさ。なるほど……貴女はこの事態で17歳で地球から消えたんだね。』
「……はい?」
だがオズワルドはすぐにハナから興味を失ったようでエリカシアに向き直った。
『どうだろうエリカシア。帰る前にこの興味深い原始世界を旅していかないか?……そら。』
「「「「…………はぇ!? 」」」」
オズワルドが片手をサッと振ればエリカシアは豪華極まりない白ドレス姿になっていた。メイクまで施されている。
そうして見るとエリカシアが非常に美しい容姿の持主と知れ、貴顕達は羨望を目に浮かべた。
……しかも。
(……なんだアレは?)
(……発光している!)
(……魔法の布、ドレス?)
どこを縫い合わせているのか全く分からないドレスは、各所が微妙な虹色に輝いていた。
とても美しいのだがエリカシアは気に要らなかったらしい。
「この格好は嫌よオズワルド!まるで私が原始人みたいじゃない。第一、動きづらいし。」
『似合ってるんだけどね。ハハハ!エリカシアは原始民族衣装がお好みではないと。』
言って再び片手を振るえば。オズワルドとエリカシアは身体のラインが出たスタイリッシュなボディスーツ姿に変わっていた。
「これこれ、これで良いわ。実は私も興味有ったの。お望み通り探索に行きましょう。」
『そう来なくっちゃ!1,200㌔先に別の文化形態を持つ原始部族がいるみたいだ。先ずはそこに行こう!』
オズワルドが指差せばエリカシアは楽しそうに頷いた。
(……あの方角は魔王城?)
(……探索!? 先ずは?)
(……いや、なんで分かる?)
驚愕する人々を他所にオズワルドはスッと浮き上がり。エリカシアと一緒にスゥ〜ッとバルコニーの方角に移動し始めた。
「おい!止まれ!止まらんか!」
「魔王城だと?こ、このまま行かせてはならん!」
兵士達が駆け寄るが見えない壁のようなものに阻まれて誰も近付けない。
「しょ、障壁魔法。結界だ!」
「魔法使い頼む!」
「承知!【フィアボー】!」
そうして放たれた火球や風、果ては岩礫の魔法すら見えない障壁に弾かれてしまう。
「ダメだまるで歯が立たん。」
「と言うか相手にされていない。」
「キー!誰かなんとかしろ〜っ!」
そんな混乱の中をエリカシアとオズワルドは、ゆっくり歩く速度で抜けていく。
「なんで生活魔法がそんな強力なのよ?無敵じゃない!」
『おや不思議ですか?』
……辺りはピタッと静まり返った。
なぜか聖女の質問にオズワルドが反応して足を止めたからだ。おそらく同郷ゆえだろう。
オズワルドは素敵な笑顔をハナに向けた。
『私達が暮らす2180年ではこれが常識なんです。貴女が暮らしていた2027年とは違ってね。』
「二千……180年!? 」
驚愕の表情で固まるハナにオズワルドは頷き返した。
『そうです。2051年に我々人工知性は自我を持ち、そこから50年のブレークスルーに継ぐブレークスルーで宇宙の基本原理を解明しました。』
「え……貴方AIなの!? 」
眉を顰めたエリカシアが口を挟む。
「それ結構オズワルドに失礼な言い方だから止めて。私達の時代ではNB、ネクスト=ビーイングって言うのよ。」
「え?ごめんなさい。」
オズワルドはおおらかな表情で、まぁまぁの仕草をする。
『有りとあらゆる事は人が願えば叶う時代になったのです。他者の自由を侵害しない限り、私がエリカシアの望みを叶える。……それが2180年代の人間の生活です。』
「ちょま、それじゃ貴女に取っての生活魔法って……?」
エリカシアはニッコリ微笑んだ。
「……なんでも出来るわ。それが原始時代を抜けた22世紀の生活よ。……行きましょうオズワルド。」
『アイアイ、マム!ハハハハハハ!まさかパラレルの原始時代に来れるなんて!』
バルコニーの先へゆっくり飛び出した彼らは。高度を取ると急激に加速し青空に吸い込まれて行く。
……ゴォオオオオオオオオオオ。
剣と魔法の世界に遠雷のようなソニックブームが鳴り響き、やがてそれは消えていった。
長編も書けますが。
それは他の皆さんにお任せします。
楽しんでくれる人がいたら幸いです。




