第1話「悪魔降臨」
オルフェ研究機関・訓練エリア。
ファクターズはEDに搭乗し、“E-core”と“エコー”の調整テストを行っていた。
「……うん、反応安定。いい感じね」
柔らかく微笑んだのは
精神適応研究主任の松永 真弥。
エコーとは——
・エーテルの暴走を防ぐ
・ファクターとEDを安全に同期させ精神安定・出力調整を同時に行うシステム
「E-coreの方も問題なし。出力の揺れも見られません」
落ち着いた声で言ったのは
エーテル研究主任の牧 美奈萌。
E-coreとは——
・ファクターのエーテルを安全に増幅し、EDへ転送する心臓部
・思考操作とエーテルスキルの実行の両方を司る最重要デバイス
「後は“共鳴解放”が使えれば、EDの性能は今より遥か上を行くんだけど…」
松永がモニターを見ながら呟く。
「…まだ“完全同調”も、誰も成功はしてませんよね…」
牧が不安そうに言った。
「ええ。でも、あの子たちなら届くかもしれないのよ。きっとね」
松永が穏やかに笑い、牧も頷いた。
——その瞬間
『大規模エーテル反応発生! 全機、出撃準備!』
オペレーター、カリンの緊迫した声が訓練エリア全体に響いた。
テスト中のファクターズは一斉に顔を上げた。
◆
オルフェ研究機関・作戦指令室。
壁一面の大型モニターには、
黒いシルエットの何かが映し出されていた。
「……間違いない。“イシュタール財団”の兵器だ」
低い声で呟いたのは、オルフェ創設者のひとりでもあり現総帥のエドワード・クロフォード。
「ついに日本にも……“ヨハン・グリム”が」
隣でトーマスが苦い表情を浮かべる。
「ああ。各国支部を襲った“謎の生物”の正体も、恐らく同じ技術で造られた何かだ。オーキュラムのデータとも一致している」
エドワードの口調は冷静だったが、その目は、確かな怒りを孕んでいた。
ヨハン・グリム——
彼もまた、オルフェ創立者のひとりで、かつてのエドワードの同志であった。
そして、今は最も危険な敵。
「正体不明機数4。進路は第6区画です!」
「狙いは……間違いなくここだな。ファクターズの出撃を」
「了解! ファクターズへ、迎撃へ向かってください!」
『了解!』
4人の声が重なった。
◆
市街地。
4機のEDが全力で駆け抜ける。
「…このエーテルの感じ…」
閃が眉をひそめる。
「うん……。初めての感覚」
音も不安そうに答えた。
また、怜や烈も、その違和感を感じていた。
重くまとわりつくような空気。
エーテルが渦を巻き、混線している。
やがて——
その“4機の異形”が姿を現した。
漆黒の装甲。
有機的な曲線と機械的構造が混ざり合う、悪魔的なシルエット。
天使を思わせる細身の機体。
4本腕の、禍々しくも女性的な機体。
巨大な城のような重装甲の機体。
逆関節の脚を持つ鳥人のような機体。
「……なんだ、あれ……SDでもEDでもねぇ…」
烈が息を飲む。
「魔獣……みたい」
音が震える声で言った。
黒い機体たちが、一斉に構える。
バサラヲの背中の刀に手を掛けながら、閃は言った。
「リーダーより各機へ。これより迎撃に移る」
「了解!」
3機が同時に武器を構えた。




