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エーテルコード  作者: エトコッコ
第1章:ファクターズ

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第6話「決意を胸に」


オルフェ研究機関・食堂。


ファクターズの4人は夕食のテーブルを囲んでいた。


今日は、全員オフの日だった。


音が明るく笑う。


「みんな今日は何してた〜?」


「もちろん“もふもふの村”〜」


閃が満面の笑みで答える。


「……好きね、それ」


怜が静かに言う。


「“もちのすけ”狂いのれーにゃんなら、絶対ハマるって」


もちのすけとは、ゆるく可愛い国民的キャラクターだ。


「……ゲーム苦手」


怜は少しだけ不満げに呟く。


「ほほう。もし、コラボしたら?」


閃はイタズラな笑みを浮かべ、怜に聞いた。


彼のアホ毛がクルッとカールしていた。


「……うぅ……」


怜は本気で悩んだ顔をした。


音が微笑みながら話題を変える。


「怜ちゃん、荷物の整理終わった?」


「なんとかね。全部……」


「すげー積み上がってたもんな、怜の郵便物。あれ全部もちのすけだろ?」


烈が呆れ顔で言う。


「……だって、可愛いんだもん」


語尾が小さくなる怜。


「烈くんは何してたの?」


音が首を傾げる。


「マンガの新刊出てたから買いに行ってた」


「あ、アレだよね!空手道一本道!」


「“空手道一直線”な。音は?」


音は照れた笑みを浮かべた。


「……実はね、ずっと寝てた」


「そういう日があっていいじゃねぇか」


烈が笑う。


「可愛い〜」


閃も笑いながら言った。



閃の視線がふと窓の外へ向けられる。


モニター越しの夜空。偽物の空でも、空は空だ。


脳裏に、幼い頃の光景が蘇る。


母ちゃん。

父ちゃん。

友達。

故郷。


(……もう絶対に失いたくない。この仲間達を、この場所を、この日常を……)



怜は、静かに紅茶を啜っていた。


温かい液体が喉を通る。


(……ママも、紅茶好きだったな)


怜の母は、優しい人だった。


いつも抱きしめてくれて、守ってくれて、笑ってくれた。


だが——


ある日、母は病に倒れた。


幼い怜は、母の手を握りながら叫んだ。


「ママ!? ママ!!」


怜の母の“リスバ”が生命の危機を感知した。


“リストバンドID”——通称リスバ。

国民のほぼ全員が着用する、細いシリコン状のバンド型個人認証デバイス。


リスバは自動で病院へ信号を送り、救急車はすぐに来た。


しかし、すでに母は静かに息を引き取っていた。


怜の手の中で、冷たくなっていった。


(私は……あの時、何もできなかった)


己の無力感と悔しさが、怜を「氷のファクター」へと覚醒させた。


冷たく。静かに。


だが、今は違う。


怜は3人を見つめた。


(今度は…今度こそは)



烈は、自分のトレイの食事を見つめていた。


温かいご飯。

味噌汁。

焼き魚。


(……美晴さん、元気してっかな)


烈は、生まれてすぐ親に捨てられた。


児童養護施設“たんぽぽ荘”の前に置き去りにされていた。


ある手書きのメッセージカードと共に。


——名前は新井 烈です。どうか、この子をお願いします。


そんな烈を育ててくれたのが、美晴さんだった。


「烈ちゃん、お腹すいてない?」


温かいご飯。

優しい笑顔。

安心できる居場所。


(美晴さんがくれた全部を、俺は守りたい)


烈は静かに息を吸う。


(今度は俺の番だ。この仲間を、この場所を絶対に守る)



夕食後、それぞれが自室へ戻っていった。


静かな夜。誰もいない廊下。


音は窓際に立ちながら思う。


(昔は……いつもひとりぼっちだったな)


音は幼い頃から風と“話せた”。


エーテルの流れが見えた。


だが、誰も信じてくれなかった。


「変な子」

「気持ち悪い」


言われ続け、孤立した。


音は空の写真ばかり撮っていた。


誰にも見せない、自分だけの世界。


でも、今は違う。


仲間がいる。

居場所がある。


(今は、一人じゃない)



はるか上空。


4つの黒い影が、夜を切り裂くように飛んでいた。


悪魔のような禍々しいシルエット。


“デーモンドール”——通称DD。


それらは静かに、確実に——

“ある一点”を目指していた。


(第1章 完)

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