第5話「炎の獣人と風の妖精」
午後2時。
オルフェ研究機関・地上エリアの中庭。
烈はベンチに腰を下ろしていた。
隣には、ブルドッグのテツがのんびりと座っている。
いかつい見た目に反して、いつもどこか眠たげな目つきだ。
「よしよし、いい子だな」
烈が大きな頭を撫でると、
テツは鼻を鳴らし、満足そうに目を細めた。
少し離れた場所で、音はスマカをフォトモードにし、空を撮影していた。
「わぁ……今日の雲、変な形……」
穏やかな午後。
静かで、どこか平和な日常。
——だが、それは長く続かなかった。
突如、アナウンスが流れた。
『烈! 音ちゃん! 緊急事態!』
リオの焦った声が響く。
「どうした!?」
烈が即座に立ち上がる。
『天華連盟の部隊が日本領内に侵入! 相手は“強化兵”です!』
音の表情が一気に引き締まる。
『閃と怜は不在だから、2人で対応して!』
「了解!」
2人はすぐさまフォーム姿になった。
そして、それぞれのEDに搭乗。
リンクを開始した。
格納庫から伸びる射出台。
炎の獣人、“レンゴク”。
風の妖精、“ツムギ”。
2機のEDが蒼空へ射出された。
◆
数分後、市街地郊外。
「天華連盟の連中……また来やがったな」
烈が低く呟く。
天華連盟——
人体改造技術で“人間そのもの”を兵器化する軍事国家。
強化兵には段階がある。
α → β → γ
今日の敵は、
αクラス2機、βクラス1機。
音が息を呑む。
「……強化兵……」
草原の先で、3機の人型兵器が整列していた。
無機質なヘキサアイ。
強化兵専用SD——レギオン。
『こちらレギオンβ。ファクターズを確認』
『排除を開始する』
一斉に武器が構えられた。
「行くぞ、音!」
「うん!」
烈が地面を蹴る。
レンゴクが爆発的な速度で突進した。
そして、“ビーストガントレット”を展開。キバを模した鋭いクローが光る。
しかし——
ガンッ!!
横からの蹴りでレンゴクが弾き飛ばされた。
『データ通り。過去のファクターズとの戦闘記録は全て解析済み』
無機質な声。
明らかに“人間”ではない。
一方ツムギは空へ舞い、“ヒスイガンブレード”で射撃するも、回避される。
1機は射撃で牽制、もう1機は接近しツムギへ斬りかかる。
ガシャァンッ!
「きゃっ……!」
「音!」
「だ、大丈夫……!」
ツムギは距離を取ろうと跳ぶが、
射撃で進路を塞がれ、再び斬撃が迫る。
『ファクターズ……大したことないな』
その瞬間——
レンゴクの全身が深紅に燃え上がった。
「思ったよりやるじゃねぇか……なら手加減はいらねぇな」
烈の声が低く響く。
炎のエーテルが爆発的に立ち上がった。
同時に、音も風のエーテルをツムギへ集中させる。
烈が叫ぶ。
「《火炎弾》!!」
レンゴクの拳から火球が撃ち出される。
レギオンβが回避しようと身を翻す——が、
ドゴォォォッ!!!
直撃。
装甲が溶け、火花が散った。
続いて音。
「《斬撃のウィンド》!!」
ツムギが空中で回転し、
風の刃が連続して放たれる。
シュバシュバシュッ!
レギオンαの1機がズタズタに切り裂かれた。
後方の1機が回避する——
だが、すでに背後にはレンゴクがいた。
「どこ見てんだ、コラ」
その言葉と同時に、レンゴクのクローが装甲を貫き、レギオンαは爆散した。
◆
「音、大丈夫か?」
「うん! 烈くん、さすがだよ!」
烈は散らばったレギオンの残骸を睨む。
「まさかエーテルスキル使う羽目になるとはな……前より強くなってやがる」
「……そうだね」
静かな風が吹き抜ける。
——天華連盟が、本格的に動き始めた。
国家間の暗闘は、もう止まらない。




