表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エーテルコード  作者: エトコッコ
第1章:ファクターズ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/38

第4話「ハーフファクター」


オルフェ研究機関・訓練エリア。


広大なシミュレーションルームに、4機の白いEDが整列していた。


訓練生専用エーテルドール——“プレントルーパー”。

左肩には 01、02、03、04 の番号。


その様子を、観察室からじっと見つめる女性がいた。


クレア・泉・テイラー。

オルフェ研究機関で最年少の研究員であり、総帥代理トーマスの娘。

几帳面で真面目。時々こぼれる毒舌が持ち味でもある。


タブレットを操作しながら、小さく呟く。


「……さて。今日もちゃんと動けるかしら」


訓練エリア全体が起動音を轟かせる。



「よーし、準備はいいかー?」


教官補佐として前に立つ閃の声が響く。


『はい!』


4人の声がそろって返る。

閃は軽く手を上げた。


「今日は基本動作の確認。まずは——」


言い終える前に、01番機が前へ飛び出した。

素早いステップ、迷いのない動き。訓練用ブレードを構える。


「グンジン、とりあえず落ち着け」


『了解であります!』


あずま 幹雄みきお。通称「グンジン」。

技術は訓練生トップだが、やる気が前に出すぎるのが難点。

軍家庭育ちで、いつも軍人口調。



02番機は、ぎこちなくバランスを崩しながら進む。


『うおっと……!』


光井みつい きょう。通称「ミチ」。

ぽっちゃり体型で陽気なムードメーカーだが、操縦はまだ不安定。


「ミチ〜、1回転ぶごとにGGピザ1箱(¥5500)ね〜」


閃が軽い口調で言う。


『ペナルティ重すぎだろ!!』


と返ってきた声には、焦りと悲鳴が混ざっていた。



03番機は軽快に動く。まるで跳ねるように、踊るように。


『閃先輩! 見てくださいっ!』


笹本 みのり。通称「みのりん」。

身軽さと反射神経は訓練生の中でも突出している。


「みのりん、すげぇな!」


『えへへっ♡』



04番機は、最も安定した滑らかな動きを見せていた。

無駄がなく、軌道も正確。制御の質がまるで違う。


『まあまあ、って感じかな〜』


篠崎 アンジュ。通称「アンジュ」。

外見はギャル風だが、本質は器用で冷静な万能型。


クレアは観察室で小さく息を吐いた。


「……順調ね。光井以外は」


タブレットを確認する横顔は、どこか楽しそうだった。


閃も4機を見て頷く。


「じゃあ、次の課題いくぞー」



訓練後。

休憩室では4人がソファに沈み込んでいた。


「ち、ちかれた〜……」


「ミチ、GGピザ3枚コースだね」


「無理だっつの!?」


アンジュの軽口に、みのりが笑う。


「でもみんな、本当に上手くなってきたよ!」


「その通りです。努力は必ず身を結びます」


東の真面目な言葉に空気が少し柔らぐ。


光井がふと、窓の外を見ながらぽつりと言った。


「……なぁ。俺たちって、いつ本物の“ファクター”になれるんだろ」


その言葉に、場が静かになった。


訓練生たちはまだ完全に覚醒していない。

エーテルファクターへの途中段階——「ハーフファクター」。


エーテルを見ることはできても、スキルは使えない。

EDには乗れるが、本来の力は出せない。


「ま、慌ててもしょうがないっしょ」


アンジュが肩をすくめる。


「ええ。必ずその日は来ます」


東は真剣に頷いた。


「あたし、雷属性がいいな〜。かっこよくない?」


みのりの無邪気な声に、皆の顔に笑みが広がった。



その頃、研究エリアでは。


壁いっぱいのモニターには、訓練生たちのエーテル適性が映し出されている。


「順調だな」


静かに呟いたのは、オルフェ研究機関・総帥代理

トーマス・テイラー。


温厚で理知的。総帥・エドワード不在の間、日本支部を支える存在だ。


隣ではクレアがデータを真剣に見つめている。


「でも光井はてんでダメよ、パパ」


「クレア。焦らせてはいけないよ。人には人のペースがあるんだ」


「……分かってるってば」


そのとき、研究室のドアが開いた。


「失礼します!」


キリッとした声。オペレーターの陳佳琳チン・カリンが入ってくる。

真面目で几帳面。同じオペレーターのリオとは対照的なタイプだ。


「トーマスさん、“オーキュラム”が妙なエーテル反応を拾いました」


オーキュラムとは、オルフェ機関研究所が使用する、マザーコンピューターの名称だ。


差し出されたタブレットには、見慣れない波形が揺れていた。


「……これは?」


「不明です。SDでもEDでもない……生物寄りのパターンです」


クレアも画面を覗き込み、息を飲む。


「……ほんとだ。まるで脈動してる」


「…ああ」


トーマスは冷静に頷いた。


「監視を続けてくれ。何か掴めるはずだ」


「了解!」


カリンがすぐに駆け出していく。


静かになった研究室で、モニターの波形だけが脈を打つように揺れていた。


——世界の裏で、何かが動き始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ