第4話「決戦」
閃と怜は、甘いひとときを共に過ごしていた。
互いにとって初めての経験でもあった。
けれどそれは、いわゆる恋愛とは少し違う。
恋人になったわけでもない。
——覚悟の共有
そして、お互いに心のどこかでは、少しだけ心細かったのかもしれない。
◆
深夜。
閃は誰もいない食堂で、スマカを片手に“オニョ姫のゲーム実況”を流しながら、ひとり食事をしていた。
(ドンドンモンキーの新作かー。プレイしてーなー)
そんなことをぼんやり考えつつ、軟骨をつまむ。
「……閃くん」
背後から、ふいに音の声がした。
「?!」
驚いた拍子に、アホ毛がピンッと跳ね上がった。
「ご、ごめん!びっくりさせちゃった!」
音は慌てて謝った。
「おぉ…音。大丈夫よ。というか、こんな夜中に……?」
「うん……夕食の時、閃くんと怜がいなかったから、ちょっと心配で……」
「ありがと。全然心配いらないよ」
閃はいつも通りの笑顔で答えた。
「音こそ、大丈夫……?」
「うん!」
「フフッ」
自然と、閃は笑っていた。
「怜には、夕ご飯持っていって一緒に食べてたの」
「そっか!怜も嬉しかっただろうね」
(音……いつのまにか怜って呼び捨てにしてるな)
その小さな変化に気づきながら、閃は微笑んだ。
「その後、閃くんのところにも行ったんだけど、いなくて……」
「あぁ、その時は烈とトレーニングルームにいたかも」
閃のスマカには、烈からのメッセージが残っている。
『ヒマなら、トレーニング付き合ってくれねーか?』
それに対し
『(* • ω • )b』
と返信していた。
「そうなんだ。閃くんも、烈くんも、怜も……みんなそれぞれ向き合ってる。本当にすごいなぁ……」
音はぽつりと続ける。
「わたしは……まだ向き合えてない。当日になっても、向き合えてないかもしれない」
俯く音。
「こんなの、本当は“向き合え”って言う方が酷だって。だから音がそう思うのは自然なこと」
閃は静かに言った。
音は少し驚いた顔をする。
「閃くん……怜と全く同じこと言ってる」
それを聞き、閃は小さく笑う。
(そりゃ……ね)
「閃くんも怜も、いつもわたしの心も癒してくれる……」
「俺も怜も、音にいつも癒されてるから。お互い様だよ」
「えへへ……嬉しい。烈くんは、頼りになる優しいお兄ちゃんって感じだし」
「本当そう」
閃も心から同意した。
「わたし、本当に……本当に、みんなに出会えてよかった」
音の目が、少し潤む。
「閃くん……ハグしてもいい?」
「もちろん」
ふたりは静かに抱きしめ合った。
「閃くん……あったかい」
「音もだよ」
2人は、しばらくそのままだった。
◆
——数日後
オーキュラムがDDの反応を捉えた。
ついに、その時が来た。
DDはそれぞれ、別の地点へ向かっている。
——1対1を望んでいる
応じるかどうかは、ファクターズ次第。
そして彼らは、その望みに応じた。
イノのエンプティアには、閃。
アークのドレティアには、怜。
クリスのセレティアには、烈。
サムのラフティアには、音。
それぞれがEDに搭乗し、エーテルを集中させる。
発射口が開く。
外は、暗雲立ち込める大雨だった。
見守る者たちの視線を背に、それぞれの想いを胸に、予想到達地点へと飛び立った。
◆
閃のバサラヲと、イノのエンプティア。
両者は静かに対峙していた。
「この前の夢……やっぱイノのスキル?」
「あ、うん!よかった……ちゃんと届いてたんだ、閃には」
「しっかり届いてたよ。イノたちの“戦う理由”も」
「うん……だから、どうしても……たとえキミでも、倒さなくちゃいけないんだ……」
「わかってる。状況は違えど、俺も……同じだから」
「うん……そう、だよね……」
「……これ以上話してたら、さらにやりづらくなるね。もうやめよう」
そういうと、閃は刀を抜いた。
「……そうだね」
イノも両腕のブレードを展開する。
◆
怜のシラユキと、アークのドレティア。
「よォ。やっぱオメーか」
「……」
怜は無言でジャベリンを構える。
「手加減なんてしねーぜ?確実に殺る。オメーも、オメーの仲間も……」
「……そうはさせない。ここで仕留める」
「へっ……やっぱ相手がオメーでよかったよ……」
ドレティアが構えを取る。
◆
烈のレンゴクと、クリスのセレティア。
クリスは無言で大砲を展開していた。
(言葉はもういらねぇ……そういうことかよ、クリス)
レンゴクがクローを構える。
「行くぜ……!!クリス!!」
◆
音のツムギと、サムのラフティア。
「サム……」
「や、やぁ……音。また会えて、う、嬉しいよ……アフフ」
サムの声は震えていた。
音はすぐに察した。
サムも戦いなど望んでいない。
「サム……!どうしても避けられないの!?」
「……ボ、ボクには、もう、どうしようもできないんだ……アフフ」
「……そう」
音は悲しみを胸に、ガンブレードを構え、ゆっくりと上空へ。
そして、ラフティアも同じように上昇する。
黒雲の下、冷たい雨粒が地面を鈍く打ち付けている。
それぞれの戦いが、始まろうとしていた。




