第3話「雷の武士と氷の巫女」
ゴォォォッ!!
空を切り裂いて、2機のEDが降下してくる。
白金の装甲を纏った閃のED、バサラヲ。
白銀の流線型ボディを持つ怜のED、シラユキ。
地面に着地した瞬間、衝撃波が周囲へ広がった。
『よいしょっ』
閃の声が、バサラヲから軽快に響く。
『……おまたせ』
怜の落ち着いた声が、シラユキから響く。
烈と音が安堵の息を吐く。
「とりあえず、あとは頼む!」
2機のSD——ブロックスとクリューガーは、突然現れたEDに警戒を強めた。
ブロックスはライフルを、クリューガーは盾とナイフを構える。
「…アンタらさぁ…」
閃が呟いた直後、ブロックスが発砲した。
電磁弾が鋭く空気を裂く。
バサラヲは即座に背中の刀、“金剛鬼伝”を抜刀。
黄金の刃が閃き、飛来した弾丸を斬り払う。
カキィンッ!!
火花が弾けた。
「おっと」
閃が軽口を叩く。
同時に、クリューガーがシラユキへ突進してきた。
重装甲の巨体が、地面を揺らしながら迫る。
だが、怜は動じない。
シラユキの脚部ホバーユニットが作動し、機体が滑るように移動。
クリューガーの突進は空を切った。
一方、バサラヲは跳躍しブロックスへ肉薄。
ライフルを一刀両断した。
ガシャンッ!!
武器が転がり、ブロックスは後退する。
「ケンカするなら、場所を選びなっ!!」
しかし閃の声は届かない。
ブロックスは腰のハードポイントからハンドガンを抜き、再び構えた。
「そうかい…!」
閃は刀を構え直す。
ブロックスが発砲しようとした瞬間、閃の姿はすでに視界から消えていた。
刀が輝き、ハンドガンを斬り飛ばす。
続けて脚部の関節へ一撃。
最後に腕部の武装ユニットも切断した。
ガキィンッ!!
ブロックスが膝をつく。
「…もう、やめな」
閃の声に、機体の動きが止まる。
ハッチが開き、若い男が震える手で降伏の意思を示した。
閃は小さく頷く。
一方その頃、クリューガーは再びシラユキへ突進していた。
怜は静かに息を吐く。
回避と同時に、“フロストジャベリン”がクリューガーの脚部を打ち据えた。
巨体がふらつき、大きくバランスを崩す。
ガシャァンッ!!
怜は間髪入れずジャベリンを構え直し、盾を弾き飛ばす一撃を叩き込んだ。
ガンッ!!
盾が宙を舞い、地面へ転がる。
それでもクリューガーは戦意を失っていない。
ナイフを握り、ふらつきながら立ち上がろうとする。
「……はぁ」
怜が小さくため息をついた。
次の瞬間、シラユキのジャベリンが高速で振るわれ、クリューガーを完全に無力化した。
「……制圧完了」
怜は淡々と言い放つ。
クリューガーのハッチが開き、中年の男が両手を上げて出てきた。
怜の肩が、わずかに落ちる。
数分後、軍警が到着し、2人の男は連行されていった。
烈と音が駆け寄る。
「お疲れ」
「お疲れ様です」
「無事に終わったにゃ〜」
閃が伸びをしながら笑う。
「……軽い」
怜が呆れた声で言うが、その瞳はどこか柔らかかった。
街は静けさを取り戻し、人々は安堵の表情で日常へ戻っていく。
ファクターズの仕事は——
いつも、こうして静かに終わる。
◆
その夜、4人はオルフェ研究機関の食堂で夕食を囲んでいた。
「今日もお疲れ様でした!民間の皆さん含め、怪我人0で良かったです!」
音が明るく言う。
「いやぁ、音と烈がパトロールしてて助かったよ」
閃が返す。
「…しかし、また小競り合いか」
烈が苦く呟く。
「終わらないね…こういうの」
音も静かに言った。
世界は、表面上は平和だ。
だが、その裏では——今日のような小さな争いが絶えず起きている。
「でも、俺たちがいる限り、守れるものはある」
烈が真剣に言う。
「うん」
閃が頷く。
「そうだね」
音も頷く。
怜は静かに視線を落とした。
——そして、彼らはまだ知らない。
この日常が、やがて大きく揺らぐことを。
世界の裏で、3つの勢力が動き始めていることを。




