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エーテルコード  作者: エトコッコ
第6章:律動

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第5話「鉄の心臓③」


サキの目から見ても、烈のエーテルが尽きたことは明らかだった。


サキは一気に攻めの姿勢に入る。


『烈!!カイバに切り替えて!!』


カリンの叫びが響く。


その声に烈はハッとし、即座にオートモードを起動。


「カイバさん!!耐えてくれ!!」


烈の指示に、機械音声が即座に応じる。


『リョウカイシマシタ。マモリニテッシマス』


レンゴクは完全に防御態勢へ移った。


だが、サキの攻撃をどこまで耐えられるかは分からない。


その瞬間——


レギオンΩに向けて、ライフル弾が飛来した。


放ったのは、沖田の操るザンテツだった。


命中はしなかったが、注意を逸らすには十分だった。


すぐにレンゴクへ通信が入る。


『ファクター……選手交代だ』


短い一言だったが、烈は即座に理解した。


「了解です!」



(部下を二人も失い、目の前の戦いをただ見ているだけとは……)


沖田は、力量の差を痛感していた。


(たとえ勝てずとも、時間稼ぎくらいは——)


沖田に退くつもりはなかった。


命を賭してでも、足止めする覚悟だった。


サキは、標的をレンゴクからザンテツへと切り替えた。


守りに入ったレンゴクよりも、危険だと判断したのだ。


ザンテツが再びスナイパーライフルを放つ。


サキはそれをかわし、高速で間合いを詰めると、刀で銃身を斬り落とした。


さらに続けざま、ザンテツの左腕を切断する。


それでもザンテツは、レギオンΩに組み付いた。


残った手足で、正確に関節部を捉え、ロックする。


だが、パワーの差は歴然。


頭部を掴まれ、無理やり引き剥がされる。


しかし、その反動を利用し、奪われていた刀を強引に取り返した。


サキは一旦、間合いを取った。


(次の一撃が……最後か)


ザンテツは、残った右腕で刀を構え、ゆっくりと踏み出そうとする。


その時——


通信が割り込む。


『沖田よ。死に急ぐな』


その声を聞いた瞬間、沖田は叫んだ。


「さ、榊先生!?」



上空から、一機のSDが降下してきた。


通常のザンテツとは違う。


頭部に刻まれた「天」の文字。

——ザンテツ・天。


日本唯一のアイアンハート、榊 修の専用機。


(あれは……アイアンハート……!?)


モニター越しに見ていたカリンは、思わず息を呑む。


外部情報を遮断し、回復に専念していた烈も異変に気づき、モニターを起動する。


「……!?あれって、たしか……」


烈の脳裏に浮かぶのは、東が何度も語っていた“剣豪”の存在。


「……先生」


沖田にとって、榊は師だった。


『沖田よ。過ちは生きて、次に活かしなさい』


落ち着き払った、澄んだ声。


ザンテツ・天の両手には、すでに二本の刀が抜かれていた。


サキは、機体越しにも分かるほどの圧を感じていた。


(……今までとは、まるで違う)


そう思わせる存在感だった。


「さて——お引き取り願おう」


榊がそう告げると同時に、ザンテツ・天は流れるように間合いを詰める。


サキも即座に応戦するが、榊の二刀流は、速さだけでなく、恐ろしく正確で、そして静かだった。


サキは一度上空へ退く。


その瞬間、レンゴクから《火炎弾》が放たれ、レギオンΩの目前で爆発する。


爆風が、サキの機体を揺らした。


エーテル回復速度に優れる烈は、すでに半分近くまで回復していた。


烈は連続で《火炎弾》を放ち、爆発を重ねる。


ダメージ自体は通らない。


だが、目眩と体勢崩しには十分だった。


サキが回避した先には——

すでに、ザンテツ・天が刀を構えて待っていた。


空中に跳躍し、放たれる居合斬り。


完全にはかわしきれず、レギオンΩの右手首が切り落とされた。


サキは即座に不利と判断し

、そのまま撤退した。



レギオンΩの退却を確認し、カリンとヒロシマ基地のオペレーターは安堵の息をついた。


「あのレギオンに……初めて、まともなダメージが入った……」


烈は、アイアンハートの実力を目の当たりにし、驚きを隠せなかった。


榊は、静かに刀を納める。


沖田が、深く頭を下げた。


「先生……私は、自惚れていました。結果、部下を失いました」


榊は穏やかに答える。


「沖田。次をどうするか——君自身、もう分かっているね?」


「はいっ!!」


力強い返事に、榊は優しく微笑んだ。


やがて、烈の元へ通信が入る。


『初めまして。私は日本防衛軍所属、榊 修大佐です。君が、ファクターズの新井 烈くんだね?』


思ったよりも年配で、物腰の柔らかい声だった。


「アッ……はい!そッスね……」


烈は緊張で、ぎこちない返事になる。


『もしよろしければ、少し直接お話がしたい』


烈は戸惑い、モニター越しにカリンを見る。


『行きなさい。滅多にない機会よ』


カリンは微笑んだ。


「……わ、わかりやした……」



烈と榊は、それぞれの機体を降り、歩み寄った。


「……すんません。こんな格好で……」


フォーム姿の烈は、少し照れくさそうだった。


榊は、写真で見たよりもずっと年を重ねているように見えた。


白髪混じりで、小柄な体格。


身長だけなら、烈の方がずっと大きい。


それでも、榊の存在感は圧倒的だった。


「ファクターズの皆さんの日々の活躍は、常に耳にしております」


榊は、柔らかな表情で語る。


「立場は違えど、“守りたい”という想いは同じ。これからも守っていきましょう。共に」


そう言って、榊は両手を差し出した。


烈も、緊張しながら両手を差し出す。


固い握手。


その手は、大きく——

そして、驚くほど温かかった。



その後、烈はキャリアへ戻り、オルフェへ帰還した。


(……榊さん、か。ああいう人もいるんだな……)


握手を交わした自分の手を見つめながら、烈は思う。


(もしグンジンがいたら……多分、失神してたな)


静かに、そう思いながら。

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