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エーテルコード  作者: エトコッコ
第6章:律動

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第1話「光の届かない世界で①」


オキナワ上空。


キャリアの中には、怜と音、そしてそれぞれのEDが搭載されていた。


——時は少し遡る。



海上保安庁から、オルフェ研究機関へ救援要請が入った。


極めて珍しいケースだった。


要請内容は——

“密猟者の撃退”。


オキナワ海域に生息する「古代クジラ」は、絶滅危惧種として厳重に保護されている生物。


全長35〜40メートルにも及ぶその巨体は、希少性と同時に大きな価値を持ち、密猟の対象となり続けていた。


だが、問題はそれだけではなかった。


ほぼ同時に

・ヒロシマ基地からの援軍要請

・シズオカの避難施設からの救助要請

も届いていたのだ。


オルフェは即座に判断を下す。


出動は、3班に分けて行う。


まず、オキナワ海域へ向かうのは怜と音。


海中戦において、この2人の相性は抜群だった。


次に、ヒロシマ基地へは烈が単独で向かう。


そして最後に、シズオカへ向かうのは閃と訓練生4名、オペレーターとしてクレアが同行する。


シズオカでは、避難施設や病院の電力停止という深刻な問題が起きていた。


さらに、支援物資を積んだ支援用SD「ヒキャク」や、救助隊が未だ到着せず、インフラが完全に麻痺している状態だった。


訓練生にとっては、これが初めての“実地任務”となる。


クレアは、彼らのオペレーターとして同行することになった。


こうして、それぞれの班はキャリアに乗り込み、現場へと向かっていった。



伶と音を乗せたキャリアは、海上保安庁から送られてきたデータをもとに、指定された海域へ到達した。


そこは、見渡す限りの海のど真ん中だった。


「……音、サポートお願いね」


怜が静かに言う。


「うん!まかせて!」


音は、いつも通りの明るい笑顔で応えた。


それぞれのEDに搭乗し、キャリアのハッチが開く。


そして、シラユキとツムギは同時に海へと飛び込んだ。



海中。


エーテルを集中させている影響で、シラユキとツムギはそれぞれ眩い光を放っていた。


それは、暗闇を照らすための灯りであると同時に、機体強度を高めるためでもある。


古代クジラが生息する水深は、通常800〜1000メートル。


一般的な機体であれば、耐圧の限界を超える深さだ。


しかし、元々高性能なEDは、ファクターのエーテル出力によってさらに性能が引き上げられる。


動力や推進力の主軸もエーテルであり、たとえ宇宙であっても換装無しで活動可能な、場所を選ばない汎用性を誇っていた。


エーテル素材の装甲とエーテルによる強化を併用すれば、理論上は水深1500メートルまで問題なく行動できる。


古代クジラの深度に到達すること自体は、問題ではない。


問題は——

古代クジラと密猟者の正確な位置だった。


要請が出た理由も、密猟者の反応を捉えながら、位置を完全に見失ってしまったためだった。



水深800メートル付近。


周囲は、ほぼ完全な闇に包まれている。


視界にあるのは、エーテルで発光するシラユキとツムギだけ。


ツムギは脚部から、計6基のビットを展開し、それらを広範囲へ散開させていた。


ツムギのビットは、攻撃だけでなく、防御・撹乱・偵察にも対応する万能型エーテル武器だ。


今回、音は広大な深海で古代クジラと密猟者を探し出すため、普段以上に集中力を要していた。


そのため、役割は完全にサポートに徹している。


「……うーん。見当たらない……」


音が、小さく呟く。


2人は、さらに深く潜っていった。



水深1200メートル付近。


音は、変わらずビットに意識を集中させていた。


——そのとき。


「……いたっ!」


音が、数機のSDの反応を捉えた。


同時にそのデータはシラユキへ共有され、伶は迷いなく進路を変える。


送られてきた情報には、SD反応が5機、そしてその近傍に大型生物の反応。


ほぼ間違いなく、古代クジラだ。


——すでに、密猟者に発見されている。


距離はあるが、シラユキの最大速度なら、瞬時に詰められる。


ツムギは距離を保ちつつ移動した。


不用意に近づけば、戦闘領域に巻き込まれてしまう。


戦闘は怜。サポートは音。


慣れない環境だからこそ、役割を徹底する必要があった。



距離が縮まるにつれ、ビットから送られてくる映像は、より鮮明になっていく。


「……っ!?」


音は、思わず息を詰まらせた。


映像に映っていたのは、古代クジラの腹部に深々と突き刺さった10本近い巨大な銛。


あまりにも痛々しい光景に、音は強いショックを受けた。


その映像は、同時にシラユキのモニターにも表示されていた。


怜の表情が、氷のように凍てついていく。


「……クズどもめ」


低く呟き、シラユキはジャベリンを構えた。

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