第2話「アポイント」
天華連盟・研究室。
リーアとチャンは、レギオンΩの戦闘ログを確認していた。
「ほう……完全同調か」
チャンは驚くでも焦るでもなく、淡々と呟いた。
「ウチ、ビックリしましたよ〜」
リーアは軽く言った。
チャンはモニターを見つめたまま言う。
「もともと想定された仕様だ。今まで実現しなかっただけだな。あの装甲でも防げないほどのエーテル攻撃……だが、あれは元々“護身用”程度。こちらにはギアもある。問題はない」
「そっすね〜」
と軽く答えたが、心の中では
(簡単に言ってくれるよな〜…)
と思っていた。
◆
格納庫へ向かうと、サキがレギオンΩの前に立っていた。
「サキ、そっちどうだった?」
リーアが声をかける。
リーアがオルフェと交戦していたのと同時期、サキは単独でイシュタールへ出向していた。
サキは振り向き、短く答える。
「……以前より、力は増している」
視線の先には、損傷したサキ機の装甲。
リーアも思わず眉を上げた。
サキもリーア機の損傷が気になっていたようだ。
「……あぁ、これね」
リーアは、オルフェでの出来事を話した。
◆
イシュタール財団・格納庫。
ゼクストの4人とナンシーが集まっていた。
サムがぴょんと跳ねながら言う。
「アフフ……!ボ、ボクたち、前より強くなってきてるよね!?」
イノもうなずいた。
「うん。間違いなく強くなってる」
アークは腕を組みながらぼやく。
「でもよ、4人がかりってのが気に食わねぇんだよなぁ……」
ナンシーが優しく笑う。
「あなたたちの成長スピードなら、すぐに追い越せるわ。大丈夫」
クリスは淡々と、そのやり取りを眺めている。
その時、ナンシーのタブレットからヨハンの声が響いた。
『ゼクストの諸君!!素晴らしい戦いだった!!この調子でファクターズもやっちゃおうぜ!?』
テンション高めの声に、ゼクストの表情は微妙に沈んだ。
するとヨハンはあっさりと言った。
『おー、可愛い少年少女達。ジジイがはしゃぎすぎたね、ゴメンね。ところで、ファクターズと“交流”とかしてみたい?』
「え?」
ナンシーまで目を丸くした。
イノが小さな声で答えた。
「……はい。彼らと、話してみたいです」
ヨハンは即答した。
『ならさ、やっちゃおうよ。“交流会”』
その場が一瞬で静まり返った。
◆
オルフェ研究機関・作戦司令室。
エドワードが深々と頭を下げた。
「烈くん、閃くん。美晴さんのご冥福を、心より祈るよ……。そして、ファクターズ諸君。日々の働きに心から感謝している。本当にありがとう」
烈が首を振る。
「いえ……エドワードさんがすぐ動いてくれたおかげです」
閃も続けた。
「僕らがこうして動けるのは、スタッフの皆さんあってこそです」
怜と音も強く頷く。
「そう言ってくれると嬉しいよ」
エドワードは微笑むと、トーマスに向いた。
「……ところで、イシュタールの動きが最近見えないな」
トーマスが答えた。
「ええ。赤のレギオンがオルフェと交戦していた同時刻、紫のレギオンはイシュタールと交戦していたようです」
「そろそろ何か動きがありそうだな……」
そう呟いた時、音が恐る恐る手を上げた。
「あ、あの……」
エドワードとトーマスが振り向く。
音は俯きながら続けた。
「怒られちゃうかもしれないけど……ゼクストのみんなと……話してみたい、です……」
閃も続けて言う。
「すみません。僕達も同じ気持ちです」
前回の閃とイノのやり取りを聞いていたエドワードとトーマスは、すぐ理解した。
トーマスが腕を組む。
「……しかし、どうやって?」
エドワードも考える。
「ゼクストに戦意がなくとも、DDがどう動くか……」
烈がつぶやく。
「戦いになる前に、ってのが一番理想なんだけどな……」
『じゃあさ、交流会開いちゃえば?』
音がぱぁっと明るくなった。
「交流会!!すごくいい!」
だが次の瞬間、全員の視線がモニターへ向く。
“GIGAS”
ヨハンだった。
トーマスが叫ぶ。
「ヨハンッ!!」
エドワードも続ける。
「また貴様か……!!」
烈はブチ切れた。
「テメェ!!なんで自然に会話入ってきてんだよ!!仲良しのご近所さんかゴルァァ!!」
横で音がぶんぶん頷く。
怜は無表情のままだったが、
(その例え、いる……?)
と内心でツッコんでいた。
閃がヨハンに問う。
「交流会?」
ヨハンが軽く答える。
『ゼクストも話したいって言うからさ。だったら交流会でよくね?って』
トーマスが怒鳴る。
「何を企んでいる!!」
ヨハンはけろっとしている。
『いやいや、今回はマジで何もないよ〜?普段、ゼクストの皆に頑張ってもらってるし、たまには息抜きさせてあげたいだけ』
トーマスは眉をひそめる。
「信じられるか!!」
するとエドワードが静かに口を開いた。
「……ファクターズ。君達はどうしたい?」
少しの沈黙。
閃が答えた。
「交流会…したいです」
エドワードは頷き、モニターへ向いた。
「だそうだ」
『は〜い。じゃ、日程・場所はあとでハッキングして送っとくね〜♪』
そう言ってヨハンの映像は消えた。
トーマスは困惑した表情だった。
「……大丈夫なんですか?」
エドワードは深く息をつき、答えた。
「奴が嘘をつく時は分かる。今回の件に関しては、嘘はついていない……。最も、何を考えているかは分からんが……」
トーマスは静かに頷いた。




