表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エーテルコード  作者: エトコッコ
第5章:交流

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/38

第1話「アフターケア」


時は、少し遡る。


烈が美晴の最期を見届けてから、しばらく経った頃。


クレアは、ただひたすらエレコプターの中で待っていた。


やがて、烈が戻ってきた。


その瞳は泣き腫らして真っ赤だった。


けれど、表情はどこか穏やかで、静かに受け入れているようにも見えた。


クレアは戸惑いながら尋ねる。


「え……?もう、いいの……?」


烈は短く頷き、優しく言った。


「ああ。次は……ゆっくりできる時に、また来るよ」


クレアは小さく息をのみ、遠くを見る。


そこには結菜と子供たちが並んでいた。


きっと、見送りに来てくれたのだ。


クレアが会釈すると、結菜も深く頭を下げた。


子供たちは、泣いている子、ただ立ち尽くしている子、烈に全力で手を振る子——それぞれが、精一杯の気持ちを表していた。


烈は手を振り返し、そっと呟いた。


「帰ろう」


エレコプターはゆっくり上昇し、空へと戻っていった。



帰りの機内。

沈黙の中で、烈がふと口を開いた。


「……クレア」


「な、なに?」


びっくりしながら振り向いたクレアに、烈は穏やかに笑った。


「一緒に来てくれて、ありがとな」


その一言で、クレアの思考は完全に停止した。


「ア、アタシ……!何もしてないよ……?」


烈は、どこか照れたように続ける。


「そんなこと…ねーよ」


行きのキャリアで、烈は珍しく弱気になっていた。


クレアは寄り添い、励まし、状況を誰より早く動かしてくれた。


それが烈には、どれほど心強かったか。


クレアは耳まで真っ赤にし、湯気が出そうな勢いで俯いた。


烈はそんな彼女を見て、いつもの空気が戻ってきたことにほっとしていた。



一方その頃。


レギオンΩとの戦闘からしばらくして、閃と怜、そして訓練生の4人は全員気を失っていた。


救護班に回収され、それぞれ医務室へと運ばれた。


少し遅れて、音が自室で目を覚ました。


スマカを見ると、リオから着信が入っていた。


折り返すと、すぐにリオが叫んだ。


『音ちゃん!!めっちゃいいタイミング!!今すぐ医務室来て!!』


「わ、わかりましたっ!」


音は胸騒ぎを感じながら、急いで医務室へ向かった。


そこには——

怜、訓練生4人がフォームのままベッドに横たわっていた。


リオ・カリン・松永・牧の姿もあった。


驚いた音は、話を聞くより先に《治癒のウィンド》を全員に展開した。


淡い風が包み込み、5人は次々と目を覚ます。


「……あれ?生きてる……?」


光井が呟く声に、思わず皆が笑ってしまった。


怜は起きると同時に叫んだ。


「閃は!?」


怜らしからぬ勢いに、全員がびくっとした。


だが、音の顔も青ざめていた。

閃と烈の姿が無い事に。


松永が静かに、これまでの経緯をすべて話し始めた。



説明が終わる頃、音は震えていた。


「わたしが……のんきに寝てる間に……そ、そんな大変な……」


泣きそうな声。

責めているのは自分自身。


その瞬間——怜が立ち上がり、音を強く抱きしめた。


「違うの、音。あなたは何一つ悪くない」


音の肩が震え、怜の胸元で息を整える。


「怜ちゃん……ありがとう……」


そう言うと、音も怜を抱きしめた。


その光景に職員たちも胸が熱くなった。


怜は松永に向き直る。


「閃のところへ行ってもいいですか?」


松永はすぐに確認を取り、頷いた。


「ええ、大丈夫よ」


怜と音はすぐに閃の医務室へ向かった。


残された訓練生はというと……


「約束です。どんな罰でも受けます!」


と東が真っ直ぐな目で言い、

松永は思わず目を丸くした。


「罰? 副総帥が正式に許可出したんだから、罰なんてないわよ?」


研修生全員が同時に固まった。


「むしろ、あなた達を引き留めようとして、本当にごめんなさい…」


松永は4人に、頭を下げた。


みのりが慌てて言う。


「違います!松永主任が、あたし達の事を守ろうとしてくれたの、ちゃんと分かってます!」


アンジュが手を挙げる。


「そうそう。マジ、皆のママっすよ」


松永は思わず微笑んだ。


「……ありがとう」


牧も満面の笑み。


「皆、本当にかっこよかったよ!」


みのりが照れながら笑う。


「えへへ……すぐやられちゃったケド……」


リオが続けた。


「ミチ!アンタの男気、お姉さん感動したからね!」


光井はうつむきつつ笑った。


「はは……気絶してただけなんすけど……」


カリンも優しく言った。


「本当にかっこよかった。でも…もう無茶はしないでね?」


「す、すんません……」


松永は思った。


(この子たち……ほんとに良いチームね)



怜と音は閃の医務室へ入った。


音は《治癒のウィンド》をそっと展開したが、閃はまだ目を覚まさない。


寝顔は穏やかで、静かに呼吸している。


「……このままに、しとこっか」


「……うん」


2人は小さく微笑み合い、そっと部屋を出た。


手はずっと繋いだままだった。



深夜。


閃の医務室に、怜が現れた。


抱えているのは——もちのすけのぬいぐるみ。


怜はそっとベッドに近づき、閃の額に手を当てた。


熱はない。

頬に触れると、すべすべしている。


怜の手がひんやりして、気持ちよかったのか、閃が寝言を漏らした。


「……ぐふふっ……」


怜は微笑み、椅子に座った。


もちのすけを膝に置き、そのまま、閃の頬に手を当て続けた。


静かな夜だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ