表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エーテルコード  作者: エトコッコ
第4章:分岐

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/38

第3話「カイバ」


全てのEDに搭載されているブレイン“カイバ”。


・EDを操作するための「補助兼・自立プログラムAI」

・機体のトラブルやエーテル切れの際、カイバの緊急自立プログラムが発動し、自動稼働に切り替わる

・この自立プログラムは、ファクターの任意で起動することも可能


さらにEDには、“エーテルコンデンサー”も内蔵されている。


言わばEDの「予備バッテリー」かつ「エーテル貯蔵器官」。


つまり今のバサラヲは——

カイバによる“自立モード”に移行していた。


自立モードでは、スキルは使えない。


だが、閃の戦闘データはプログラムとして記録されている。


そこに回避特化の行動パターンを組み合わせれば、短時間ならこの暴走状態のレギオンΩにも対処はできる。


そして、その戦いを支えるのが音だった。


音はファクターズの中でも、最もエーテル容量が多い。


だからこそ、先にエーテル切れを起こしそうな閃を優先し、自分の力を残していた。


閃はコクピットの中で目を閉じ、深く息を吸い、回復に意識を集中させる。


一方で、ベルセルク状態だったレギオンΩの動きが、少しずつ鈍り始めていた。


(やばっ……もうそろそろ限界かな?)


メルはそう察しつつも、動きの変わったバサラヲを重点的に狙っていた。


ハードクラッシャーの猛攻を、バサラヲはギリギリで捌き続ける。


だが防御が弾かれ、ついにハードクラッシャーが直撃しようとした、その瞬間——。


背面から強烈な衝撃が走り、レギオンΩが吹き飛んだ。


音が最後の力を振り絞り、《突破のウィンド》を放ったのだ。


一点に高密度の空気弾を叩き込み、ピンポイントで破壊するスキル。


狙いは——

以前、2機で刻んだ背中のバツ印の斬撃跡。


そこに撃ち込んだ。


レギオンΩの損傷は一気に広がり、ベルセルク・ギアの限界を告げる警告音が、コクピット内に鳴り響く。


「っ…!ここまでか!!」


さすがのメルも、顔をしかめた。


そしてレギオンΩは、ヴァルキリー・ギアをフル稼働させ、そのまま戦域から離脱していった。



「さっすが音! カイバさんも助かったよ」


閃が息を整えながら言う。


「はぁ、はぁ……久しぶりだよ、エーテル空っぽになるの……」


音は肩で息をしながらも、どこかスッキリした笑顔を浮かべていた。


『オフタリトモ、ブジデナニヨリデス。センサマモ、レイセイナハンダン——スバラシイ』


バサラヲのカイバが、無機質な声で告げる。


続いて、ツムギからも別の声がした。


バサラヲのカイバとは違うタイプの、機械的な女性の声だ。


『オンサマ。オツカレサマデゴザイマスル。アトハワタクシガ、ツムギヲ エアキャリアマデ 、イドウサセマスルノデ、ユックリ ヤスンデクダサイマスル』


ツムギに搭載されたカイバが、いつもの独特な口調でそう告げる。


「うん! ありがとう、カイバさん」


音は微笑みながら礼を言った。


(……前から思ってたんだけど、なんでツムギのカイバさんだけ、語尾に『マスル』って付くんだろう……?)


そんな小さな謎に首をかしげているうちに、遠方で待機していたエレキャリアが接近してきた。


2機はそのまま収容され、オルフェへの帰還についた。



——数日後。


烈のスマカが鳴った。

発信者は、美晴の娘・結菜。


烈はいつもの調子で通話に出る。


「おう、結菜さん。どうした?」


そう言って耳に当てたスマカを、そのままゆっくりと握りしめる。


烈の顔から、みるみる血の気が引いていった。



同じ頃。

閃は訓練エリアでトレーニングをしていた。


そこには怜やクレアもいる。


その訓練エリアの扉が乱暴に開き、烈が血相を変えて飛び込んできた。


「閃っ!!」


閃はその声に振り向く。


烈の表情を見た瞬間——

閃は、何が起きたのかを直感で理解してしまった。


怜とクレアも、2人のただならぬ空気に気づき、戸惑いながら様子をうかがう。


閃が、震える声でぽつりと呟いた。


「……美晴さん……?」


その名を聞いた瞬間、怜とクレアも状況を悟ってしまう。


烈が駆け寄ってきた。


「美晴さんがっ……!!」


そこから先は、言葉にならなかった。


閃の表情も、明らかに動揺していた。


クレアは2人を見て、すぐに口を開く。


「まだ、間に合うの!?」


烈は苦しそうに答えた。


「……わからねぇ」


その返事を聞くと同時に、クレアは迷わずスマカを取り出し、通話を始めた。


相手は父・トーマス。


状況を手短に、しかし正確に伝えていく。


それを見ていることしかできない怜は、ぎゅっと拳を握りしめていた。


閃と烈はただ黙り込んでいた。


頭の中では、様々な感情や思考が渦を巻いていたが、言葉にはならなかった。


その間、クレアが通話を切る。


「エレコプターの準備はすぐ出来るから! 早く行って!!」


そう、2人に向かって言う。


だが——

2人の足は、その場から動かなかった。


クレアは戸惑い、声を荒げる。


「な、なにしてるの!? 早く!! パパも、早く行ってあげてって言ってるわ!!」


けれど、2人の胸の内には同じ迷いがあった。


イシュタール財団、そして天華連盟。


どちらがいつ再び襲来するか分からない。


特に天華の動きは、今まさに拡大中だ。


この状況で、ファクターズの主力が同時に抜けるわけにはいかない。


——そう頭では分かっている。


それでも。


沈黙を破ったのは、閃だった。


閃は、烈に向き直る。


「烈。俺の分も……頼む」


烈はその言葉に、思わず目を見開いた。


だが、閃の瞳は——

覚悟を決めていた。


烈はその目をまっすぐ見返し、力強く返事をする。


「……わかった!!」


クレアに案内され、烈はエレコプターへ向かって駆け出した。


その背中を見送りながら、怜は閃に詰め寄る。


「……何をしているの? アンタも行きなさい……!」


いつになく強い口調だった。


閃は、視線を落として答える。


「俺はファクターズのリーダーだ。今、2人も抜けるなんて——」


その言葉を、怜が遮った。


胸ぐらを掴み、涙をこらえながら叫ぶ。


「今行かないと、一生後悔するよ!!」


閃は、怜の表情に息を呑んだ。


怜が、目の前で母親を失ったあの日。


閃が、家族も友達も故郷も、全てを失ったあの日。


お互いの過去を、2人は知っている。


だからこそ——この言葉は重かった。



すでに準備されたエレコプターのそばには、トーマスが待っていた。


烈はトーマスに向かって、深々と頭を下げる。


「ホント……すんません!!」


トーマスは首を振り、静かに答えた。


「当たり前のことをしているだけだ。エドワードさんにも、すでに許可は取ってある。心配はいらない。……閃くんは?」


烈はうつむき、首を横に振った。


トーマスは、それ以上は何も聞かなかった。


「さ、早く!」


クレアが烈を促す。


トーマスはクレアに向き直り、言った。


「クレアは、烈くんの傍にいてあげてくれ」


クレアは真剣な表情で頷いた。


2人はエレコプターに乗り込む。


その前に、クレアは最後の確認をした。


「……閃、本当に待たなくていい?」


「……あぁ。出してくれ」


烈が、絞り出すように答える。


そして——

エレコプターは、激しくローターを回しながら、青空へと飛び立っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ