第1話「援軍」
上空。
オルフェのエレキャリアは、ある地点へ向かっていた。
——約1時間前。
オルフェに、日本軍から正式な“支援要請”が入ったのだ。
オーキュラムでも反応を捉えていたが、今回天華連盟が狙っているのはオルフェではない。
日本軍の軍事基地——カゴシマ。
オルフェは自衛目的以外の出撃には、国の許可が絶対条件。
だから、要請が届くまでは出ることすらできなかった。
烈と怜が不在のため、出撃したのは閃と音の2人だった。
エレキャリア内部には、バサラヲとツムギが固定されている。
日本軍の報告によれば——
・レギオンα:3機
・レギオンβ:2機
・レギオンγ:1機
そして、ライトピンクの新型:1機
合計7機。
オーキュラムも同じ反応を示していた。
◆
エレキャリア内。
音は落ち着かない表情で、膝の上の手をぎゅっと握りしめていた。
前回の戦闘——
馬乗りにされ、滅多打ちにされた時の恐怖。
そして、自分を殴りながら笑っていた、あの少女。
音の記憶は昔まで遡る。
泣いても、嫌がっても笑われた——いじめられていた頃の、自分。
そんな音の様子に気づき、閃は黙って隣に座り、そっと手を握った。
「大丈夫。俺がついてる」
閃は優しく微笑む。
「それに……俺には音がついてる」
自然体の笑顔に、音の不安がふっと消えた。
「……ありがとう、閃くん。こうやって手を握ってもらうの……久しぶりだね」
音が少し照れたように言う。
「初めての実戦の時だったよな」
閃も懐かしそうに返した。
「あの時は皆、色違いのトルーパーだったね」
「そういや、まだ残ってんのかな?」
「能勢さんが“予備機として保管してる”って言ってたよ」
そんな他愛もない会話をしながら、音はそっと閃の肩にもたれていた。
◆
日本軍・カゴシマ基地。
天華のレギオン部隊と、日本軍の無人SD部隊が激しく交戦していた。
日本軍の戦力は——
・ザンテツ2機:前衛
・ブロックス6機:中衛・後衛
いずれも無人機。
対するレギオン部隊は——
・βチーム:前衛
・αチーム:中衛・後衛
・γクラス:指揮
その様子を、メルのレギオンΩは少し離れた上空から見下ろしていた。
「も〜。何で“ノーブレイン”相手に手間取ってんのよ」
“ノーブレイン”——
全ての無人SDに搭載されているAI、ブレインを皮肉ったスラング。
“ パターンに従うだけの能無し”という意味だ。
メルが呆れていると、γクラスから通信が入る。
『メル隊長、申し訳ございません! 新兵の訓練も兼ねておりまして……!』
「隊長ゆーな」
メルの声が低くなる。
『しっ、失礼しました! “メル姫”!!』
「よし」
満足したらしい。
そうしていると、メルの視界の遥か遠くに、点が2つ見えた。
レーダーには反応が無い。
しかし——メルは本能で理解した。
「おっ? 来た来た♡」
『?ファクターズの反応はありませんが……』
γクラスが不思議そうに言う。
「あいつらにレーダーなんて役に立たないっつの」
メルは素っ気なく答えた。
◆
カゴシマ基地から大きく離れた空域。
エレキャリアから降下する、バサラヲとツムギ。
レーダーに映らないよう、遠距離から降ろすのが定石だ。
閃は《電影》を展開し、2機を包み込んでいた。
微弱な電磁場を展開し、敵レーダーや索敵をかき消すスキル。
SDにもレギオンにも反応は一切映らない。
上空を滑りながら、閃は戦況を確認した。
——SD部隊
ザンテツ:1機撃墜
ブロックス:3機撃墜
残り4機
——レギオン部隊
βクラス:1機撃墜
残り5機+メル機
合計6機。
バサラヲは手を伸ばし、《雷散》を放つ。
広範囲に電撃ををばらまくスキル。
他の攻撃スキルに比べ、威力は落ちるが、足止めには十分だった。
雷撃が降りそそぎ、レギオン部隊を襲った。
唯一、γクラスだけが間一髪で回避し、すぐに距離を取る。
閃はバサラヲのウェポンラックからアサルトライフルを抜き、雷のエーテルを付与。
雷を帯びた弾丸は凄まじい威力と速度で、レギオン部隊を次々に撃ち抜いた。
音もツムギのガンブレードを抜き、エーテル弾を連射。
こちらも直撃し、レギオンを撃墜していく。
バサラヲとツムギが地面に着地した時には——
メルとγクラスを除くレギオンは全滅していた。
その光景に、γクラスは震えながら呟く。
「こ、これが“魔術師”の力……」
“魔術師”。
特異な外観に加え、魔法のような技を使用してくる、EDに付けられた異名である。
そして、メルのレギオンΩが、2人の元へゆっくりと接近して行った。




