第2話「Ωの襲来」
上空から迫る3つの影。
ファクターズは、思わず息を呑んだ。
「飛んでる……!」
音の声が震える。
通常、SDもEDも飛行機能は持たない。
音のツムギもスキルで浮遊しているだけだ。
しかし上空の3機は——
当然のように空を滑っていた。
大型スラスターのような物も見当たらない。
烈が叫ぶ。
「まさか……アイツらもファクターか!?」
だが、その“気配”はまったく違った。
ゼクストのようなエーテル反応はない。
分類としては“強化兵”に近い。
「リーダーより各機へ——迎撃に入——」
閃の言葉が最後まで届く前に、ライトピンクの機体が突然、弾丸ような速度で突っ込んできた。
ツムギの通信モニターが強制的に開かれる。
「見つけたぁ!! マヌケ面ァッ!!!」
甲高く愛らしい声。
画面に映ったのは、人形のような美少女——メル。
「マ、マヌケ面!? わたしのことっ!?」
音は思わず声が裏返った。
次の瞬間、
メルのレギオンΩの“巨大な腕”がツムギ掴み、そのまま地面に叩きつけた。
◆
怜と烈は、すぐに援護に飛び込もうとした——
だが、ヴァイオレットの機体が2人の前に降り立つ。
「どけコラァ!!」
レンゴクがクローを展開、シラユキはジャベリンを構え、2人同時に斬りかかった。
しかし——
サキのレギオンΩは、両腰のナイフをそっと逆手に持つと、わずか一振りでそれを払った。
烈も怜も、何が起きたか理解できないほどの緩やかで鋭い速度。
そして次の瞬間、2機まとめて蹴り飛ばされる。
◆
リーアのレギオンΩはまっすぐバサラヲへ。
通信が自動で開く。
「キミがウワサのデン——」
リーアが言い終わる前に、閃の《雷撃》が凄まじい威力で放たれた。
普段、どれだけ強くても30%程の出力でしか使わない。
しかし、今回は100%の出力で放った。
本能が叫んでいた。
——この敵は “危険” だ。
直撃したリーアのレギオンΩは、ビル壁に叩きつけられる。
——だが、まるでホコリを落とすかのように肩を小さく揺らし、平然と立ち上がった。
「……なにソレ。静電気?」
閃は思わず叫びかけた。
(静電気!? すごいビリビリだぞ!!え、静電気??)
だが考える暇もなく——
「次はこっちの番ね〜」
その軽い声とともに、バサラヲは凄まじい衝撃を受け、頭から壁に激突。上半身ごとめり込んだ。
◆
メルのレギオンΩは、ツムギに馬乗りになり、両腕の巨大ユニット“ハードクラッシャー”で滅多打ちにしていた。
音はスキル《エアクッション》で、空気のクッションを作り、衝撃を軽減するのが精一杯。
「うぅっ……! !あぁ……!!」
音の苦しむ声と歪む表情。メルはモニター越しにそれを見て——頬を赤らめた。
「ハァッ…♡ ハァッ…♡んもうっ…たまんないっ♡!!」
完全にスイッチが入っていた。
◆
怜と烈は、サキ機の高速斬撃をを防ぐだけで手一杯だった。
怜は《アイスステップ》で、シラユキの機動力を上げ、瞬間的にサキ機を抑える。
その隙に、レンゴクはビーストスタイルへ変形し、音の元へ一直線に走った。
レンゴクは口腔奥に内蔵された“ビーストキャノン”を発射する。
「あ゛ぁん!?」
メルは怪訝な表情で、片腕のハードクラッシャーで軽く弾いた。
続けざまに迫るレンゴクを、先程防いだ腕をそのまま利用し、簡単に殴り飛ばした。
その一瞬の隙をついて、音が《衝撃のウィンド》を至近距離から叩き込む。
メル機は上空へ吹き飛ばされたが、すぐに姿勢を整えた。
「んも〜! サキ、ちゃんとライオン抑えといてよ!」
「すまない」
サキは淡々と答え、再び怜に刃を向ける。
◆
その時、リーアの通信が入った。
「よーし、今日はここまで。帰るよ〜」
サキは即座に攻撃を止めた。
「了解」
メルはぷくっと頬を膨らませる。
「あーーもう!! あのバカライオンのせいで!!ムカツキ!!」
「約束は約束。帰るよ〜!」
「は〜い…」
3機のレギオンΩは、あっさりと引き返していった。
◆
戦闘後。
「みんな大丈夫!?」
音はすぐ《治癒のウィンド》を発動し、烈と怜、各EDを修復していく。
音の《治癒のウィンド》は生命体だけではなく、“エーテルそのもの”も修復できる。
そのため、エーテル系の素材を多く使用したEDは、軽いキズや損傷程度ならば、音のスキルで完全に修復可能だ。
「ありがとう、音」
「すまねぇな」
2人がそれぞれ礼を言い合う。
そして音は閃の元へ急ぐ。
「閃くん!大丈夫!?」
バサラヲはまだ壁に刺さったままだった。
「あ〜…見ての通りかな」
閃が軽く返す。
「まっててね!!」
ツムギがバサラヲの脚を掴んだ。
「ちょっ…ちょちょっ!? まって!!自分で出——」
ズボッ!!
勢いよく引き抜かたバサラヲは、空中に放り出され、頭から地面に落ちた。
「うわわわ!!ごめんなさいっ!!」
すぐに《治癒のウィンド》を使用する音。
バサラヲはゆっくり立ち上がり、ツムギの方を向き、自身の頭部を指さした。
「……“アンテナ”、折れてる?」
閃は尋ねた。
バサラヲの頭部には、黄金のアンテナがが1本角のように付いてる。
音は確認し、静かに言う。
「……うん。しっかり、折れてる……」




