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エーテルコード  作者: エトコッコ
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雷鳴の夜に


雷鳴が鳴り響く大雨の夜の市街地に、轟音が響いた。


ビルの壁面が砕け、破片が雨のように降り注ぐ。

逃げ惑う人々の悲鳴は、爆発音にかき消されていく。


高さ7メートル級の鋼鉄の巨人——“ スタンドドール”、通称SDが2機、武器を構えて対峙していた。


灰色の機体と、黒色の機体。

どちらも軍用ではない。個人所有の違法改造機だ。


閃は、崩れかけた建物の影に身を縮めていた。

まだ10歳にもならない、小さな体が恐怖で震えていた。


ほんのちょっと前まで、ここは普通の街だった。

家族と夕食を食べて、友達と遊んで、明日の宿題の話をしていた。

それが今は——。


「逃げろ! 早く!」


誰かの叫び声が聞こえる。

閃は走り出そうとしたが、足がすくんで動けない。


2機のSDが激突した。

金属が軋み、火花が散る。


次の瞬間、衝撃波が街を薙ぎ払った。

周囲の窓ガラスが、一斉に砕け散る。


怖い……。

誰か、助けて——。


そのとき、閃の視界が真っ白に染まった。


いや、白ではない。

これは——黄金の光?


体の内側から、何かが溢れ出してくる。

熱いのに、痛くない。

恐怖が、少しずつ薄れていく。


熱い。

痛くない。

ただ——怖くない。


「せん——」


誰かが呼ぶ声が聞こえた。母ちゃん? 父ちゃん?

でも、もう誰の声も届かなかった。


轟音。

閃が立っていた建物が、SDの攻撃を受けて崩れ始める。


瓦礫が降ってくる。

閃は強く目を閉じた。


少年が知っていた世界は——音を立てて崩れ落ちた。



〜♪——

緩やかなアラーム音が鳴る。


「……んん」


閃は目を開けた。

見慣れた天井。白くて、清潔で、暖かい照明。


また、昔の記憶だ。


もう随分前のことなのに、未だに鮮明に思い出す。

あの日失ったもの。家族、友人、故郷。

そして、自分が“何者でもなかった頃”の記憶。


「ふぃ〜……」


閃は小さく息を吐き、ベッドから起き上がった。


部屋の隅の鏡に、自分が映る。

淡い金髪に黄色い瞳。


上矢かみや せん。“雷のファクター”であり“ファクターズ”のリーダー。


机の上で“スマートカード”、通称スマカが光っている。

今日の予定が表示されていた。


『08:00 - 定期訓練』

『18:00 - エコー測定』


「…よっと」


閃は制服に袖を通す。

オルフェ研究機関の制服だ。


閃は、てっぺんのアホ毛をつまんだ。

今日も元気に跳ねている。


「よしっ、今日もいい感じっ♪」


部屋を出る前に、窓の外へ視線を向ける。

山間に広がる巨大施設


——“オルフェ研究機関 日本支部”。


地下深くまで続くこの場所は、閃にとっての“家”になっていた。


静かで、どこか温かい。

閃はこの場所が好きだ。


昔は守れなかった。

でも、今はもう大丈夫。


今度は守れる。

この場所も、仲間も、全部。


悪夢は故郷に置いてきた。


今日も、ファクターズとしての一日が始まる。

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