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9話: 暗黒の回廊
虚空の棋盤を抜けた慧と雫の前に、次なる課題は真っ黒な空間――暗黒の回廊だった。
周囲は漆黒で、視覚はほぼ機能せず、音も光も最小限しか届かない。
足元の光点だけが微かに揺れ、二人を次のルートへ導くように点滅していた。
「……視覚がほとんど使えない」
慧は耳を澄ませ、感覚を研ぎ澄ます。分析者としての脳が、限られた情報を最大限に解析し始める。
「直感……頼みます」
雫は微かな振動や気配を感じ取り、慧に指示を送る。
「左……いや、右かもしれない」
進むたびに、回廊の構造が変化する。
光点の配置も時折矛盾し、錯覚か現実か判断がつかない。
前を行く参加者の影が、光点に干渉し、誤ったルートに誘導することもある。
心理戦と空間認識が同時に試される極限状態だ。
慧は冷静に光点の周期と位置を計算し、雫の直感と照らし合わせて進む。
「直感と分析、両方が揃って初めて突破できる」
雫は頷き、揺れる光点の微細なパターンを読み取り続ける。
回廊の奥に差し掛かると、光点が収束し、暗闇が徐々に解け始めた。
「突破……したな」
慧は小さく息を吐く。雫も微笑み、安堵の表情を浮かべる。
しかし、二人の心には緊張が残る。
暗黒の回廊は、異次元情報世界の未知の恐怖と、心理戦の奥深さを示す序章に過ぎなかった――。




