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83話: 崩れゆく境界
次元の境界線が、音もなく崩れ始める。床と壁、空間そのものが微妙に歪み、足を踏み出すたびに重力や空気の感覚が変化する。慧は解析を試みるが、変化の速度と複雑さは予想を超えていた。
「……境界が安定しない」
慧の眉がひそむ。空間の微細な揺れや光の波動から、安全な歩行ルートを割り出す必要がある。
雫は直感で揺らぎの方向や空間の不規則さを感じ取り、一歩ごとの安全を判断する。互いの呼吸を合わせ、分析と直感を同期させながら、崩れゆく境界の中を進む。
周囲の光や空間の揺れが心理的圧力となり、わずかな迷いも致命的な誤差につながる。慧は情報を整理し、雫は感覚で危険を回避する。
やがて、崩れゆく境界の中心部に到達すると、空間の変動は徐々に収束した。慧は深く息をつき、雫も微笑む。
二人は再び、異次元情報の安定した領域に足を踏み入れた。崩れゆく境界は、心理戦と解析・直感の融合を試す試練だった。




