3話: 多層記憶迷宮
光の迷路を抜けた先、霧島慧と月城雫の前に新たな試練が立ちはだかる。
ホール全体が透明な壁と無数の浮遊階層で構成され、まるで記憶の層を覗き込むかのようだ。
「これは……一体何層あるんだ?」
慧は目の前の光景を解析し始める。
階層ごとに異なる光のパターン、微細な揺らぎ、そして断片的な映像が浮かび上がる。過去の出来事、他者の行動、未来の可能性――それらが複雑に交錯していた。
「ここも……直感が必要ね」
雫は静かに呟き、無意識に手を伸ばすと、まるで情報の波を読み取るかのように、次の進路を指し示す。
慧はその指示を頼りに、分析を重ねる。
「この層は過去情報、次は未来の可能性……組み合わせれば全体像が見えるはずだ」
解析と直感を融合させ、二人は慎重に階層を進む。
しかし、この迷宮には予期せぬ仕掛けが待っていた。
各階層は微妙に時間軸がずれ、過去と未来が錯綜する。誤った一歩は、まるで記憶を食い違わせるかのように二人の進路を狂わせる。
「気を抜くな……一瞬の判断が命取りだ」
慧の声は緊張で硬くなる。雫も呼吸を整え、光の微細な揺れを読み取ろうと集中する。
やがて、二人は複雑に絡み合った層の中から、出口の兆しを見つける。
光点が収束し、ホール全体が静止した瞬間、慧は深呼吸をする。
「……突破したか」
だが、二人の視線の奥には、まだ見えない次の試練が潜んでいる。
多層記憶迷宮は、異次元の情報世界が本当に始まったことを知らせていた――。




