何もない部屋
◇ ◇ ◇ ◇
引っ越しをした
今まで住んでいた部屋
借りていたから 綺麗に掃除しないと
黒ずんだ床を拭く
サッシの埃をはらう
窓を磨く
台所 洗面台 トイレ お風呂場
どこもかしこも念入りに
忘れちゃいけないベランダも
砂と土と鳩のフンまで
目の前にある大きな大木
ああ この木ともお別れ
“葉落ち月”に別れるなんて 淋しい限り
桜の木ではない
ないが 新緑の葉がベランダから手を伸ばせば
枝に触れそうで いつも 飛び乗りたい 衝動にかられた
ああ 私の雪の女王様……
駄目よ!
感傷に浸ってる場合ではない
ヒモをとらねば!
はぁはぁ! ひぃひぃ!
駄目だ届かん!
洗濯を干していたヒモが 高すぎて外せない……
ああ こんなことなら ボロ椅子を捨てなければよかった
あいや~! いざ 根性!
目一杯 ぐんと 背伸びした
どうにか なんとか 太いヒモがはずせた
これで掃除は完了
◇ ◇
一人 ドアの前に立つ
がらんどうの部屋
なあんにも ない部屋
なんて広いんだろう
家具があった時とは イメージがちがう
なんにもないよ
いやキッチン 換気扇 襖 押入れ あるけど
私のモノは何もない
何もかもなくなった
寂しさと あっけなさ
でも笑えた
部屋が シャキッとして見えるんだもん
うん 君の部屋 心地よい広さだね
おもいで走馬灯始動開始!
ここでくらした12年間
泣いた 笑った 怒った 吠えた!
ありがとう 楽しかった
ありがとう さようなら さようなら
※ 雪の女王様とは「赤毛のアン」(村岡花子訳)の文中に出て来る桜の木です。
赤毛のアンは私の数少ない愛読書です。




