電子レンジとわたし
※電子レンジみたいな王子様が欲しいな~と思って作りました。
✧ ✧ ✧ ✧
冬のひんやりした肌寒さ。
真夜中、机上の珈琲はすっかり冷めていた。
台所の電子レンジ。
君はわたしの王子様だ。
インスタントでもいいが、冷めた珈琲は飲みたくない。
ぬるくて、味気なくて、おいしくない。
ほかほかの甘い珈琲が飲みたい。
わかりましたお姫様。
お望みならば仰せの通り──。
扉を開いて珈琲カップを置いてください。
はい。
60秒……いや90秒かな、セットした。
ぴっつ、ぴっつ、ぴっつ、ぴっつ、ぴっつ。
ぴっつ、ぴっつ、ぴっつ、ぴっつ、ぴっつ。
ああゴメン、忘れてた。フタを開けないと。
冷めた珈琲は見違えるくらい、ほかほかになった。
✧ ✧
部屋に戻りわたしは机に向かう。
ひと口、ふた口、あたたかい珈琲を飲む。
チッチッチッチッ……
チッチッチッチッ……
書いてると忘れる。
書いてると時を忘れる。
書いてると我を忘れる。
いつのまにか2時間たった。
わたしは珈琲カップを手にした。
──あ、また冷めてる。
もうこんな時間なのか。
冬の空気はすぐ冷める、困ったもんだ。
なぜ、私が飲みたい時に冷める。
まるで別れた恋人のようではないか。
そうだ思い出した。
わたしが寒い時、あなたはいつも冷たかった。
今の珈琲のようだ。
肝心な時にあなたは冷たかった。
ゴメン、嫌なこと思い出した。
なんだか心まで冷えてきたな。
台所の電子レンジ。
君はわたしの王子様だ。
くりかえし、くりかえし。
くりかえし、くりかえし。
冷めた珈琲をあたためなおしてくれる。
台所の電子レンジ。
誰もが寝静まった真夜中にひとりきり。
君はわたしの、しんぼう強い王子様だ。
※ 寒い部屋でなろうに投稿する際、電子レンジと珈琲にはいつもお世話になっております。




