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詩人になろう  作者: 星野 満


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13/36

湖底のセイレーン

※ ※ ※ ※




深い 余りにも深い古代の湖底。


深い 余りにも深淵世界が私の棲み家。


長い 長い時間を私はじっと泥沼の底で生きている。


ここは静かで心地よいけど、どうにも退屈だ。


ただでされ泥沼底の冬はとても冷える。


ベントス(底生生物)たちがワラワラと寄って来た。


私の大きな腹に蹲(うずくま)る。


この子らのいつもの日課だ。



セレーンのお腹はあったかい あったかい。


ぬくぬく ぬくぬく ああ、あったかい。

ぬくぬく ぬくぬく 眠たくなるよ。


安心おし弱き小さな友よ。


私はプランクトンしか食べないからね。


お前たちが眠っても突然ガブリと食べたりはしない。


※


時々、湖上と湖底を行き来するネクトン(遊泳生物)叔父さんが言った。


私は彼の話がとても好き。


湖上の話を沢山教えてくれる物知りネクトン叔父さん。


湖上には人間(ヒューマン)がいるんだって。


人間は水中では生きられない。


湖畔の廻りでいつも歩いている。


歩いてるってなあに? 


ネクトンは言った。


人間は鰭(ヒレ)がない。だから腰から出てる二本足で左右交互に前進するんだ。


二本の足?


そうだ、水中では生きれないから地上へ出て歩く。


地上ってなあに? わからない わからない。


セレーン、君も直ぐにわかる時がくるさ。


けれど人間にはくれぐれも気を付けるんだ。


人間は怖いぞ。


人間は魚を嫌う、すぐやみくもに殺して食う。


あら、がっつき亀たちみたい。


もっと凶暴だ。湖上に出たら気をつけろよ


人間は僕らを知らない。特に御霊の奴らには気をつけろ!


御霊の人間は危険だ、飲み込んだらやつらに飲み込まれるぞ!


湖底の力も 僕らの魔力も効かない。


そうなの?


そうだよ。


でも逢ってみたいな 姉さまに良く似た顔の人間。


先に湖上へ出た姉さまが教えてくれた。


一人とても可愛い人間を湖に引きずり込んだそうよ。


お前の姉は馬鹿だ、人間は湖中では死んでしまうのに。


あら叔父さん、私はそんな残酷なことはしないわ。


だって私の憧れ、ずっと夢見てた人間。


一目でいいから逢ってみたいな。



セレーン、お前も馬鹿だ。


俺はお前がとても心配だよ。










※ この詩は「私は誰なの?」の物語から生まれた詩です。

※ すみません最初「湖底のドライアド」というタイトルでしたが「湖底のセイレーン」としました。ドライアドは木の精霊でした。一応セレーンはギリシア神話の水の妖女(セイレーン)という設定です。

※ 2029/1/5 タイトル変更及び修正済み

 


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