表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/35

秘密

第2話です!

引き続きよろしくお願いします!

ブックマークなどをして次の投稿を楽しみにして頂けるとうれしいです!

「ひとまず、下に降りようぜ」


そう言って俺は周囲を見渡した。俺たちはまだビルの屋上にいた。


空を見上げると、春の優しい陽光がゆっくりと世界を温めている。吹き抜ける風には、どこか懐かしい桜の香りが混じっていた。


(本当に、四月なのか……?)


確かに暖かいが、それだけで季節を判断するのは早計だ。だが、目に映る景色はどう見ても春だった。


「どうやら、階段の形は変わっていないみたいだな……」


屋上の非常階段を見下ろしながら、俺は呟いた。


「行こうか」


茜が俺の隣で静かに言った。


俺たちは並んで階段を降り始めた。足元のコンクリートがひんやりとしていて、どこか現実味が薄い。


階段を降りながら、俺たちはぽつりぽつりと言葉を交わした。


「ねぇ……私たち、なんで過去に戻ったのかな?」


茜が不安げな声で囁く。


「……分からない」


俺も正直、全く見当がつかなかった。


これは何かの奇跡なのか? それとも単なる夢なのか?


そもそも、目の前に国民的女優がいること自体が夢のような状況だ。


「俺も理由は分からない。でも……これは、もしかしたらチャンスなのかもしれない」


俺がそう口にした瞬間、茜が小さく肩を震わせた気がした。


(そうだよな……さっきまで、死のうとしてたんだもんな)


いくら過去に戻ったとはいえ、気持ちの整理がつくはずもない。


「茜、もしもこれが夢じゃなくて……本当に、もう一度人生をやり直せるなら、何がしたい?」


俺は彼女を元気づけるつもりで、そっと問いかけた。


茜は少し考え込んだ後、ふっと微笑んだ。


「私は……学園生活を楽しみたい。そして、友達といっぱい思い出を作りたい」


その瞳は、希望に満ちて輝いていた。


(これは……夢じゃない)


いや、夢であってほしくない。


こんなに真剣な眼差しを向ける少女が目の前にいる。俺が絶対に、この奇跡を無駄にはしない。


「そうだよな……俺ももう、勉強に縛られた学生にはならない。たくさん友達を作って、青春して、悔いのない学園生活にする」


絶対に、もう死を考えるような未来にはさせない。


俺はそう固く決意すると、ふと足を止めた。


ようやく階段を降り終え、地面に立った俺は、スマホを取り出して時間を確認する。


「……金曜日の、午前九時?」


まだ、朝なのか。


そして、ふと制服の感触を確かめる。ブレザーの上から胸元に手を当てると、そこには見慣れない校章があった。


(俺、制服着てる……?)


嫌な予感がする。


「茜、俺もお前と同じ高校みたいなんだけど……ここ、なんて学校?」


「えっ? 本当だ! えっとね、私の通ってる高校は**星湊高校ほしみなとこうこう**っていうんだ。ここからめっちゃ近いよ!」


「……星湊高校!?」


思わず声を上げる。


星湊高校とは、このあたりで知らない人はいない超人気校だ。自由な校風と高い偏差値を誇り、倍率は毎年3倍を超える。


俺の学力でそんな高校に受かるはずがない。


「どうかしたの?」


茜が不思議そうに俺を覗き込んでくる。


タイムスリップして少し混乱していたが、4月10日って確か........


「……今日、俺たち、たぶん入学式だ」


「……え?」


一瞬の沈黙の後、俺たちはお互いの顔を見合わせた。


頭の中で情報を整理し、ようやく理解が追いつく。


「走ろう!」

「ついてきて! 私が学校まで案内する!」


「……ああ、頼んだ!」


俺たちはビルを飛び出し、茜を先頭に猛ダッシュを開始した。


春の風を切りながら、桜が舞い散る道を駆け抜ける。


息が上がる。でも、なぜか楽しかった。


「ついた!」


丘の上にそびえる校門を見上げ、俺は膝に手をついた。


「……あ、ありがとな」


息を整えながら礼を言う。


「たぶん、入学式は体育館だから急ごう!」


茜は全く息を乱していない。容姿端麗な上に運動神経まで抜群なのか……?


俺たちは急ぎ足で体育館の扉を開いた。


すると....


「1年2組1番、蒼井俊!」


担任らしき教師が、まさに俺の名前を呼ぶところだった。


「……はいっ!」


本能的に返事をしてしまった瞬間、会場の視線が俺たちに集中する。


いや、俺ではなく、茜に。


究極美人の茜が、息ひとつ乱さずそこに立っている。


彼女の姿は、走った後とは思えないほど整っていて、どこか儚げな美しさを纏っていた。


(……やばい、恥ずかしい)


俺の隣で、茜も頬を赤らめている。


ごめん、茜……


結局、少し注意を受けたものの、無事に自分の席へ座る。


そして、俺はほっと息をついた。


(同じクラスでよかった……)


これで、学園生活を一緒にやり直せる。


入学式は無事に終了したが、俺たちはすでに裏で噂されていた。


「茜、帰るぞ」


「えっ? ちょっ……」


俺は軽く手を引き、その場を離れる。


居続けるには、少々目立ちすぎた。


校門を抜け、ようやく落ち着ける場所に辿り着く。


「さっきは……ちょっと強引だったな。悪い」


「ふふっ、いいよ。私たち、すごい噂されてたもんね~」


「……ああ」


少しの沈黙の後、俺は切り出した。


「明日、一緒に学校を見て回らないか?」


茜は一瞬考え口を開く。


「うん! いいよ!」


その笑顔に、俺は心の底から安堵した。


「ああ、そうだった」


俺は脱いだブレザーからスマホを取り出す。


「連絡先交換しようぜ」


「もちろん!」


茜のプロフィールには可愛いうさぎのアイコンに「あかね」とひらがなで登録されていた。


「それじゃ!また後で連絡する」


俺は茜を家まで送ると、手を振って別れの挨拶をする。




その日は1度お互いの家で状況を整理して、次の日また会うことになった。


俺は一人暮らしをしていて家はごく普通のアパートだ。


高校生の頃からバイトばっかで家賃を払うのも精一杯だった。


茜は家族と暮らしているそうで、ここから家が近いらしい。


その日の夜はなかなか寝付けず、新しい生活に心躍らせていた。


俺は入学式のことを思い返しながら、意識を夢の中へと移動させた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

あっという間に次の朝が来た。


空は綺麗な快晴で4月とは思えない陽気に包まれていた。


茜の家の前で待ち合わせということでさすがに緊張が隠せない。


休日に女の子と2人きりで会うことなんて今までに経験したことがなかった。


とりあえず、誰にとっても当たり障りがないような、カジュアルな服を着て、歯磨きを済ませ、俺は時間に余裕をもって家を出た。


少し迷ったが茜の家までたどり着くことが出来た。


五分ほど待っていると家の扉が開き、中からはワンピース姿の茜が出てきた。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

続く

アドバイスなどどんどんお願いします!

いいね、星評価などもよければお願いします!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ