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体育大会編④

少し間が空いてしまいましたがよろしくお願いします

ハチマキを交換?


その言葉は俺の思考を停止させた。


ハチマキの交換と言えば、体育大会でカップルがとる行動の代表的なものの一つだ。


ハチマキの交換なんて今までにしたことがない。


恐らくほとんどの平凡な学生も俺と同じだろう。


茜の言葉にはどんな意図が含まれているのだろうか。


俺には想像することはできなかった。


俺がボーッと考え込んでいると、遠くで開会式の集合を知らせる合図が聞こえた。


「俊?大丈夫? 」


茜は俺の視界に覗き込むようにして身をかがめた。


視界に茜が入った時、俺は正気を取り戻した。


「あぁ、ごめん、俺よくボーッとしちゃう癖があって、ほんとごめん 」


俺の奇妙な言葉も茜はクスッと笑ってくれた。


「なにそれ、まぁいっか、はい!これ私のハチマキ 」


茜はニコニコしながら自分のハチマキを差し出した。


今日も相変わらずの美貌で、目の前に立っていると倒れそうだ。


俺が美しいオーラに気圧されて立ちくらんでしまった。


「大丈夫? さっきから様子が変だけど、今日暑いもんね〜 」


茜は本当に優しかった。


「大丈夫、俺のハチマキ、ちょっとしわくちゃだけど」


俺はこれ以上かっこ悪いところを見せてはいけないと、自分のハチマキを差し出した。


茜のハチマキはきちんとアイロンがけがされていて、完璧な茜様々だった。


交換する時、俺は何も考えられなかった。


ただこの現実が夢ではないかと思っているだけだった。


「ありがとう、これで俺も頑張れる気がする!」


その後、それぞれ反対側のバトン受け渡し地点に向かった。



俺の順番はアンカーから1個前、そして茜が俺の1個前だ。


そして俺が走ったあとはアンカーの雄大でゴールテープを切る。


今考えるとあいつは乙坂さんの走順の代わりで志願していたけど、それはアンカー含め2連続で走るつもりだったのか.....


おっかない......


茜は反対側にいるので今は見ることが出来ない。


スタートの合図があり、それぞれのクラスのトップバッターが一斉に駆けだす。


だいたいトップバッターはサッカー部とかの陽キャが担当するのが全国共通だ。


その後、俺が感じたことがないほどのハイスピードで展開が進み、俺の順番ももうすぐに控えていた。


リレーにしては珍しい、各クラスあまり差が開かない接戦となっていた。


ついに茜にバトンが渡る。


その時点で茜は2位だった。


しかし同じ走順の3位は見るからに体育会系で、スタートするとみるみる差が縮められていく。


茜も女子のなかでは運動がとても得意な方だ。


しかしやはり身体的な差には茜はかなわなかった。


俺にバトンが渡る時には僅かな差で3位に落ち込んでいた。


「俊!!!!」

「あとは任せたよ!!」


俺は茜からのバトンを受け取り走り出した。


俺が受け取ったバトンは今まででいちばん重く感じた。


リレーも終盤というのもあって、ランナーはみな強者揃いだ。


今前を走る1位と2位もすごいスピードだ。


しかし俺も負ける訳にはいかない。


だって俺の額には茜と交換したハチマキが巻かれているんだから。


俺は目の前の2位をゆうゆうと抜かした。


しかし1位とはまだ差があった。


俺は精一杯足を前に出す。


届け!届け!


俺はもう何も考えられないほどに走った。


しかしあと少しのところで1位には追いつけなかった。


「雄大!」


「俊!よく頑張った!」

「あとは任せとけ!」


バトンが雄大に渡ると、雄大は恐ろしい初速で走り始めた。


あいつ速すぎるだろ......


アンカーはどのクラスも1番早い人を持ってくるのだが、そんなの感じさせないような雄大の走り。


周りがスローモーションに見えるほどにあいつは速かった。


結果として俺たちのクラスは見事1位を獲得した。



退場が終わると茜が俺の元に来た。


「俊!」

「めっちゃかっこよかったよ!」


「ありがとう」

「茜もよく頑張ってたな」


茜は頬を少し赤く染めていた。


「茜とハチマキを交換したから力が出たんだよ」


「え!私もだよ!」


俺たちは今回一番の功労者、雄大を差し置いて会話を弾ませた。


とても楽しいリレーだった。


俺たち順調に学園生活をやり直せてるよな?




それからは時間が過ぎるのがとても早かった。


次々と各学年のプログラムが終わっていき、ついに俺の出場する100m走が回ってきた。


この競技は各クラス10人ずつが出場して、順位合計がいちばん低いクラスが勝ちというものだ。


つまり、1位でも速い順位でゴールすることが大切と言える。


俺たちの学校は事前練習を全くしないので、対戦相手もその日、その時になってみないと分からない。


それがまたひとつの面白さでもあるのだ。


俺と競う相手は、雰囲気を見る限り全員運動部だ。


だからといって俺は恐れている訳では無い。


一応中学の頃はそこそこ足は速いほうではあったし、毎日早朝にランニングするのが日課となっている。


まぁ100m走だからランニングは関係ないかもだけど。


俺は特に緊張はせずに自分の番が回ってきた。


俺はハチマキを結び直す。


その時、ハチマキ交換の時の茜のことを思い出した。


俺は周りを見渡すと、さっきまで友達と喋っていた茜が、観戦席の最前列に来て競技を見ていた。


「…タート!」


そこで鳴り響くスタートの合図。


茜を見ていた俺はスタートの合図に反応するのが遅れてしまった。


「俊、頑張って〜!! 」


!!


どこからか聞こえたその声は茜のものだった。


俺はもともと走るのは得意な方だ。

(雄大には劣るけど..... )


スタートが遅れてしまった。

俺一人がこのグラウンドで浮いている。


恥ずかしい、でもその恥ずかしさをかき消すほどの茜の応援の力を感じた。


茜も俺もこの世界で学園生活を謳歌しに来ているんだ。


俺は本来ならあのビルの屋上から飛び降りて死んでいた。


その事に比べたらこの恥ずかしさなんてなんともない。


俺の脚にはこれまで感じたことがないほどの力がこもった。


遅れてスタートをきった俺だが、力はこもっているが、なぜか足が軽い。


こんな経験今までしたことが無い。

きっと茜の応援の力だな。


茜はなんでこんなにも凄いんだろうか。


走らなければいけないのに頭の中は茜のことでいっぱいだった。


気づけば俺はゴールテープを切っていた。


「俊!!すごいよ!1位だよ!」


何が起きたが分からず棒立ちになっていた俺の元に茜が駆け寄ってきた。


「茜の応援のおかげだよ」


「え!聞こえてた!?」


茜はなんだか嬉しそうにぴょんぴょんしていた。


可愛すぎる。


俺はなんて幸せものなんだろう。


応援してくれる人がいる。


元々の世界ではこんなこと想像もしていなかった。



近くで茜のダンスの召集がかかる、喜びに浸っている暇もなかった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

続く

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次回もよろしくお願いします!

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