2人の始まり
新連載です!
ラブコメはなろうウケ悪いかもですが、どうぞ応援よろしくお願いします!
ブクマしてくれた方の期待を裏切らないよう、頑張って執筆していきます!
それでは本編スタート!
俺の視界には、ビルの屋上から広がる夜景と共に、一人の制服姿の少女が映っていた。
それもただの少女ではない。テレビで毎日のように目にする、超国民的美人女優だ。
俺は自分の目を疑った。しかし、そこに彼女はたしかに存在していた。
靴を脱ぎ、今にも飛び降りようとするかのような雰囲気で……
***
俺はこの春から大学に通っている蒼井俊、18歳だ。
もともと旧帝大を目指していたが受験に失敗し、私立の大学に通っている。
とある学歴厨YouTuberに感化されて旧帝なんて受けなければよかった........
入学して二ヶ月。第一志望ではない大学ということもあり、俺は大学生活をまったく楽しめていなかった。
周りの学生はみんなチャラい推薦組ばかりで、正直うるさい。最悪だ……。
陰キャ特有の何かが作用しているのか分からないが、中学や高校でもこういうタイプの人間とは妙に反りが合わなかった。
俺の思い描いていた大学生活とは、180度——弧度法で表すならπ違う。
もちろん、俺だって勉強だけの大学生活を望んでいたわけじゃない。
それでも、受験に失敗した劣等感からなのか、毎日、何か心にぽっかりと穴が空いたような感情に襲われていた。
毎日が苦痛でたまらない。
「なんでこうなっちまったんだよ……」
講義が終わり、バイト先では怒られ、家へ帰ろうとしていた時、俺の頭にふと、ある考えがよぎった。
——もう俺、死んじゃおっかな。
生きていることが辛くて、もう立ち直れそうになかった。
こんな人生なら、いっそ死んだほうがマシだ。
俺が死んでも悲しむ人なんていない。
いつから狂ったんだろう、俺の人生は。
***
自殺を決意した俺は、近くの高いビルの屋上へ向かった。
エレベーターは住民専用らしく、仕方なく非常階段を登ることにした。
「このビル、15階建てかよ……高いな」
長い階段を、一人考え事をしながらゆっくりと上がっていく。
俺はこの人生で、何ができたんだろう。
受験は失敗し、親には失望され、そして最後には自殺……。
足がパンパンになりながら、やっとのことで階段を登り終え、目の前の扉を開けた。
すると、目の前には制服姿の女子高生が、こちらに背を向けて今にも飛び降りようとしていた。
俺は自然と体が動いていた。
少女の白く細い腕を掴み、こちらへ手繰り寄せる。
「何やってんだよ!」
「話聞くから、早まるなって!」
俺が少し強い口調で喋ると、その女子高生は目を丸くしていた。
そして、目が合った瞬間——俺はその美貌に釘付けになった。
ツヤツヤの茶髪ロング。ぱっちりとした目。整った鼻筋。
重力を感じさせないほどカールした長いまつ毛。
美しすぎる——。
「あの……」
「あの……!」
俺は彼女に話しかけられていることに気づかなかった。
「!!」
「あぁ、ごめんごめん」
「お兄さんは、なんでこんなところにいるんですか?」
彼女は、きょとんと俺を見つめていた。
そういえば俺、さっき『話を聞く』とか言ったっけな。
なんでって聞かれても……自分も死にに来た、なんて言えない。
「なんだか落ち着かなくて、街を眺めに来たんだ」
「君こそ、どうしてあんな危ないところに立ってたの?」
彼女は俺の質問を聞くと、少し下を向いた。
その瞬間、雰囲気が変わったのが分かった。
「私、女優の仕事をしていて、学校にも全然行けないから……居場所がないんです」
「それで、今日久しぶりに学校に行ったら、一番仲の良かった友達にも無視されて……」
彼女の目から、涙が溢れていた。
俺は無意識のうちにポケットのハンカチを差し出していた。
女優か。
ここは暗くて、顔ははっきりと見えない。
だが、たしかに凛とした顔立ちで、いかにも芸能人という雰囲気を漂わせている。
この子だけ辛いことを話してくれて、俺が自分のことを隠すなんて、絶対にダメだろ。
俺は拳を強く握りしめ、なぜ今日ここに来たのか——本当の理由を話した。
***
「お兄さんにもそんなことが……」
「でも、お兄さんは浪人はされてないんですよね?」
「あ、俺の名前は蒼井俊。お兄さんじゃなくて、俊って呼んでもらっていいよ」
「君の名前は?」
「私は園宮茜です。あかねって呼んでください」
「あかねちゃんね、よろしく!」
「俺は浪人はしてないけど……なんで?」
「あ、その……私、仕事の関係で一年留年してるんです」
「だから、俊さんと同い年ってことになります」
そういうことだったのか。
……て、園宮茜ってどっかで聞いたことあるな。
いやいや、今はそんなことを考えてる場合じゃない。
今の茜にはどんな言葉をかけてあげるのが正解なんだろうか。
俺は勇気を振り絞ってある提案をすることを決める。
「茜、俺たち……学校、やめないか?」
「えっ……?」
俺のその言葉に、茜は小さく驚きの声を上げた。
それもそうだ、こんな提案をする奴なんて……。
「うん!」
え?
聞き間違いか?
……いや、違う。
その返事は、たしかに俺の耳に届いた。
俺もさすがに軽率すぎる提案をしてしまったと後悔していた。
しかし俺の聞いたその返事は幻聴ではなかった。
「私、俊くんに話を聞いてもらえなかったら死んでたし……学校なんて辞めた方がマシです」
それ誰かに脅されて言ってるとかじゃないよな?
本当にいいのだろうか。
俺から言っておきながら、少し悩んでいた。
俺は大学生だから辞めても良いが、茜はまだ高校生だ。
この判断は間違っていないのだろうか。
でも、辛くて命を絶ったらそれで終わりだ。
しかも最終的に茜の決めたことだ、尊重しよう。
俺も茜には笑ってこれから生きていって欲しい。
「よし!」
「じゃあ、決まりだな!」
「お互いこれからも頑張って生きていこうぜ」
「もう今日は遅いし、帰ろうか」
俺は来た時と同じ扉を茜と一緒にくぐった。
いや、くぐったつもりでいた。
しかし、体に違和感を覚えた次の瞬間にはもう視界がぼやけて、俺は倒れてしまった。
死ぬのをやめたのに、脳梗塞か何かで結局死ぬのか?
俺の人生はなんで全て上手くいかないんだ……。
家庭のお風呂で生まれてしまったミジンコぐらいしょぼい人生だった。
来世はせめてゾウリムシになれますように.....
しかし、その出来事は俺の人生史上最も幸運なものに繋がっていた。
「う、うぅ……」
目が覚めたら俺は扉の前で倒れていた。
しかもなんか暑いと思っていたら、俺は高校の制服を身にまとっていたのだ。
周りを見ると、隣で茜が寝ていることに気付いた。
待てよ、茜ってまさか……。
そうだ、園宮茜は今最も人気がある国民的女優だ。
今思い出した……。
昨日の夜は暗くて顔もはっきり見れなかった上に、最近テレビを見ないから全然気づかなかった。
俺があまりの衝撃に腰を抜かしていると、茜が目を覚ました。
「茜! 大丈夫か?」
と言っても腰を抜かしている俺が言うことでもない。
「う……うん」
「なんで私ここで寝てたの?」
「俺も今起きたところだ」
俺はとにかくポケットのスマホを取り出した。
え?
これは俺が去年機種変したはずの機種だ。
なんでここに?
114514。
ゆっくりとパスワードを入力する。
俺は違和感を感じながらも日付を見た。
画面には2021年4月10日と書かれていた。
「3年前!?」
画面をのぞきこんでいた茜が驚いた口調で言った。
これは何が起こっているんだ。
俺には理解が追いつかない。
俺は一旦自分を落ち着かせる。
情報を整理する。
だが、状況を察するに十中八九……。
俺たちはタイムスリップしたんだ。
高校入学当初の3年前に。
今学校辞めるって決めたばっかなのに、また学校に通えって言うのか?
いや待てよ。
俺は隣できょとんとしている茜を見た。
やっぱりだ。
茜と俺は同じ高校の制服を着ている。
つまり、俺の推測が正しければ二人で学園生活を送れるということだ。
二人で支え合えば、また俺たちの人生をやり直せるんじゃないか?
やり直してやるよ、俺らの狂った学園生活をな!
〔開幕〕リベンジスクールライフ(リベスラ)
俊と茜のリベンジスクールライフが始まる!
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