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あまり真剣に受け取ってない

 「つまり、ドラマみたいな三角関係ってこと?」

 

 千尋の説明を聞いた僕は、現実味が薄すぎて雑な喩えをしてしまった。隣で話を聞いていたしろちゃんも、言いはしないものの似たようなことを考えてしまっているだろう。


 「ドラマみたいかどうかはともかく、そうなるかもしれない……」

 

 千尋以外の登場人物は、鋭い目つきが印象に残っていた男子生徒、中原くん。そしてその幼馴染の女子生徒、飯田さん。ここまで説明された時点で、僕でさえ何が起こったのかは想像に難くなかった。そしてその想像と変わらず、中原くんが飯田さんに秘める気持ちを持っていたところ、飯田さんが千尋に告白。どこからか中原くんにその事実が漏れてしまっていたようで、千尋が睨まれる現状ができているということらしい。


 「大変ですね」

 「大変だねぇ」

 「まだ兄妹になってひと月くらいの癖して、似たような反応しやがって」


 あまりシリアスに受け取っていない僕たちに、千尋が毒づく。そういわれても、僕たちには事の重大さがわかってないのだから仕方ない。


 「で、俺はどうしたらいいと思う?」

 「時間が解決するんじゃね」

 「俺はもう普通に部活したいんだよ、できるだけ早く解決が望める手立てを知りてぇ」

 

 千尋が食い下がるものだから、食べ終わったパンの袋を綺麗に畳んで、向き直って言う。


 「そもそも、それどこまでが本当なの?」

 「私も同じことを思いました」


 どうやら僕としろちゃんは同じ疑問を抱いていたらしい。兄妹になるという事実が僕たちを似せてきているのか、元から似ているのか。そんなことを頭の中で考えているくらいには、まだ千尋の悩みに真剣になれていない。

 千尋が面食らった顔をして、手元のパック牛乳を握る力が強くなり、ベコッと音が鳴る。予想外のことを言われて驚いたか、それとも疑われていることが気に障ったか。僕の意識はすでに牛乳パックを綺麗に畳むことに向かっていたから、それを見たしろちゃんが説明する。


 「飯田さんという女子生徒が告白してきたのは本当でしょうけど、それが理由で千尋先輩が中原先輩なる人物に睨まれるようになったと考えるのは、理由があるのでしょうか」

 「そりゃあ、自分で言うのもなんだけど嫉妬されてんじゃないのか?」

 「中原先輩がそう言っていたのならいいですが、千尋先輩の憶測か、あるいはほかの部活の人がそう言っていたのではありませんか?」

 「……確かに、バスケ部のやつに最初相談したときに聞いたことだけどよ」


 あぁ、いつもは畳まないのに、パンの袋がいつもより綺麗に畳めたからって牛乳パックまでやるんじゃなかった。硬くて爪が負ける。苦戦していると、横から手が伸びてきて牛乳パックを取られる。呆気に取られて目で追えば、牛乳パックを手に持つここ先輩と、りつちゃんがいた。何やらこっちはこっちで話し込んでいたけど、こちらの話は聞こえていたらしい。


 「光くん、しろちゃんの言ってることってどういうこと?」

 「別に、大したことでもないですよ。諸々の千尋の口から語られる事実は、千尋の主観ばかりだったので気になっただけです。しろちゃんも同じことを考えていたのは予想外ですけど」

 「でも、それが普通じゃないんですか?」

 「うーん、そうなんだけどね」


 これは完全に、僕の勘だけど。

 しろちゃんに事情聴取されている千尋に声をかける。


 「千尋、結局告白はどうしたの」

 「断ったに決まってんだろ、中原との関係も知ってたんだぞ」

 「どんなふうに?」

 「手紙で告白したいって呼び出されたから、LINEで無理って伝えた。飯田は部活のマネージャーだから連絡先交換してたんだ」

 「あははははははははは」


 思わず笑う。聞く限り最悪の行動をとっている。

 笑う僕を咎めようと、千尋が一瞬口を開くが、女性陣から向けられる視線に体が跳ねる。


 「千尋くん、私、ありえないと思う」

 「私も!さすがによくないかと!」

 「……」

 

 しろちゃんだけはいつもの表情で黙ったままだったけど、二人は少し怒っていた。ここ先輩は感受性が高いのか、友達の話題を出しては自分のことのように悲しんだり怒ったりしているのをたまに見る。僕は中原くんに同情も何もできないんだけれど。

 昼休みはこの後、千尋に具体的なアドバイスをすることは無く、ここ先輩の説教で終わった。

 少しだけ同情する、飲み物を奢ってあげよう。え?コーヒー?やっぱこんな泥水飲むやつに同情なんてできないから一生ここ先輩に説教されてればいい。

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