表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/33

三番手・黒髪の騎士ギロー・1

「大歓迎ですよ!」


 それは魔人だけではなく、人間側も同様だった。一人を除いては。


「俺は頼んでないぞ!」


 マルカブリである。立ち上がり、槍の柄でギローを押し返す。


 それでギローは押し切れる。ここに来ると言った時も、一度は止めたくせに引き下がった。申し訳なさそうな面をしながら、『俺も行く』とだけ言って。


 だがギローは退かなかった。


「なんだ、ギロー」


 赤毛の騎士はギローを睨んだ。黒髪の騎士も睨み返したが、長くは続かず、一瞬目を伏せる。


 マルカブリの頭に血が上った。ギローを蹴飛ばすと、そのまま敵に討ちかかっていく。槍騎士が正面から槍を繰り出してきた。高速の槍衾に飛び込む格好になった。勢いをそがれたところを、横から剣騎士が襲う。


 ギン!


 その剣を、ギローの槍が防いだ。マルカブリも、槍騎士の槍を抑え込んだ。


「マルカブリ、独りで戦うな!」


「……」


「こいつらの連携は強力だ。こちらも連携しなけりゃ、勝てんぞ!」


 マルカブリは槍を押し返し、退がる槍騎士を追撃した。


「マルカブリ!」


 だがギローも、剣騎士の斬撃に見舞われ、言葉を続けることは出来なかった。


「マルカブリさんが騎士たちを引きはがして、一対一。これで互角だね」


 アルノーは少しホッとした。だがランボーは首を振った。


「そう、狙い通りにはいかないだろうさ……」


 戦いの場となっている踊り場を、分け合うようにして戦う二組。それぞれが別の場で戦っているようだった。アルノーは二つの戦いから目を離さないようにと、忙しく首を動かした。そうしているうちに、気づくとアロ・アダイの両騎士は、隣り合って立っていた。当然、対するマルカブリとギローも、横並びになっている。


「なんで……?」


「体さばき足さばきってやつだね」


 戸惑うアルノーに、バジーレが解説口調で言った。


「あいつら打ち合う度に、徐々に移動していったのさ。身体の向きを変え、足を踏みかえて、な。マルカブリたちも、うまく誘導した。武器でいなしたり、隙を作って誘ったりしながら」


 アロはギローを、アダイはマルカブリを相手しながら、時には相方の闘いにも手を出していた。アロはギローの槍を大きくかわすと、アダイへ向けられたマルカブリの槍を盾で弾いてやる。アダイはマルカブリの槍を払った勢いで、その槍をギローへを突き伸ばした。


 そのまま入れ替わるとアロはマルカブリへ剣を振り、アダイはギローの脇腹目がけて槍を突き出した。赤毛と黒髪の騎士は、どちらもこれに対応できないでいた。


(いきなり得物が変わると、間合いも変わる……)


(見た目が同じだけに、入れ替わりを意識しないと、対応できん) 


「マルカブリ、バラバラに戦っても、こいつらには勝てない! 息を合わすんだ!」


 ギローの呼びかけに、マルカブリは答えないでいた。


「お前は十分、強い。並みの騎士以上だ。だが、ここは一人じゃ勝てない!」


 マルカブリは手を止め、ギローを睨んだ。


「名誉や誇りを重んじるのが、騎士じゃないか? 人の手を借りて勝ったって、恥にしかならん!」


「だから、お前は騎士になれないんだ!」


 ギローは横からマルカブリをぶん殴った。マルカブリへ討ちかかろうとしていたアロが、手を止めた。


「アッキャッキャー!」


 突然の光景に、ステュクスは頭を抱えて上げた。


 倒れたマルカブリの目の前に星が飛んで、チカチカする。首を振る彼を見下ろしながら、ギローが言った。


「目的を同じくする者同士が協力するんだ。何の恥がある? それで民が救われ、領主の名誉と国の秩序が守られるなら、それこそ騎士の誇りではないか」


 星の消えたマルカブリの目に、ギローが映る。見上げながらマルカブリは睨んだが、今度こそ、ギローは目線を外さなかった。そして、手を差し伸べて言った。


「俺に協力しろ。勝って、騎士に推薦させろ」


 マルカブリは、歯を食いしばった。血の味が広がる。殴られた頬は、まだ熱い。顎もジンジンした。だがそれ以上に、ギローの言葉が心に響く。素直には、受け入れられなかった。だが……


「協力してやる。勝ったら、推薦しろ」


 幼い頃のことが思い出された。


『騎士になろうぜ、一緒にこの街から出るんだ』


(あの時、手を差し出したのは俺の方だった……)


 赤毛の少年は、黒髪の少年の手を取り、立ち上がった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ