140字小説19.20.21.『水の旅』『まだ』『憧れ』
『水の旅』
水中に潜ると、別世界に行ったみたいでとてもワクワクする。
聴こえてくるのは、心臓から行き渡る血の音と
水のゴーッという音。
そこにポツンポツンと息の音が鳴り、
外界の声は聞こえない。
全てを忘れて旅に出たい時は、浴槽へ潜ってみると良い。
目を閉じて、そのまま。そのまま。
そこはもう溟海だ。
『まだ』
雨の日。
赤いカッパの幼い子と手を繋いで歩く母親が、
横断歩道を渡ってる。
長靴がピチャピチャと音を立て、雨なのにどこか楽しそう。
微かに聞こえる笑い声が、心に刺さる。
「あぁ、守ってあげたいな」
遠くで、唸るエンジン音。
「あっ」
急ブレーキと共に2人が消える。
「こっちには、まだ早いよ」
『憧れ』
人間って憧れる!
だって雨の日以外でも外に出られて、
大好物のアスファルトだって作れちゃう。
しかも僕の天敵の塩だって食べちゃうし、
大きいから僕の世界も見渡せちゃう!
今走ってる車っていう乗り物だってあるんだよ!
ほら!!目の前に憧れの人間が2人。
「あれ?……赤い雨が降ってきた」
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最後まで読んで頂きありがとうございます。
季節の変わり目ですね。多い雨で視界の悪いこと。。
車を運転される方も、歩く方も、どうかお気をつけて!
それとは別に、嫌〜な事があれば水の中に潜ってみるといいかもしれないですね。
少しの間、嫌な事は忘れられていいと思います。
あ、溺れないように!
泉ふく