突入
一人の男がビルの入り口で周りを見回していた。
その懐には拳銃が隠されている。
ここは遼帝国反体制組織『セクト』の央都支部の一つである。男はその一員として周りを見回っていた。
昼間から止められている水道局の工事車両に男はうんざりしていた。
下水溝からの水の腐ったようなにおいが路地に充満している。
「全く……戦争中だというのに暢気なもんだぜ」
男はそう言うとそのままぼんやりと工事車両を眺めていた。
その後ろに何か動くものを見つけて男は近づいていった。
「なんだ?工具でも落としたか?」
男が三歩目を踏み出そうとしたとき、その胸に痛みが走った。
ボーガンによる弓が胸に突き立ち、男は力尽きてその場に倒れこんだ。
工事車両の陰から何十人と言う武装した黒ずくめの男達がビルの脇までたどり着く。
『見張りは潰した……次は?』
戦闘を走っていた黒ずくめの武装集団の隊長がそう言って通信機に向けて指示を仰いだ。
『焦りなさんな。すでに裏口は塞いである。連中は袋の鼠だ……一つ一つ作戦指示通りに動けば問題ない』
通信機からどら声が響いた。
小柄なショットガンを手にした男がドアを蹴り飛ばし突入した。
これが遼帝国の首都の市民達を震撼させる『屍者の兵団』のいつもの仕事風景だった。