起動
三好はいつものように『楽天地』に現れた。
「おう、隊長」
相変わらず一番奥の席には楠木がでっぷりと太った体でビールとつまみをやっていた。
「何か……あったんですか?」
やせぎすの隊員が心配そうに三好の顔をのぞき見た。
「ずいぶんとまあ察しのいいことで」
そう言って三好は楠木の隣に座った。
彼はすぐさま懐から命令書を取り出した。
「見るまでもねえでしょ?金冠町のセクトあたりを襲えってところじゃないですか?」
楠木はそう言って命令書を三好に付き返した。
「ほう……さすが副隊長殿」
「褒めても何も出ませんよ。最近、あそこの人の出入りが激しいことくらい治安省も分かってるはずだ。当然、潰しにかかって当然……まあ、戦争に負けて連中にリンチに合うくらいなら俺達に汚れ仕事を押し付けるってのが賢いやり方だ」
やけっぱちの楠木の言葉に店にたむろしている隊員達は苦笑を浮かべた。
「まあ、それが軍隊ってもんだ。地下だろ?指揮所は」
そう言うと黙って電気ブランを飲み干した三好は立ち上がった。
楠木も仕方が無いというように立ち上がる。それを見て隊員達も彼等に続いて店の奥の隠し扉の中に消えた。