表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精霊に転生した女の子は見習い精霊から精霊王を目指す(前編)  作者: s_stein
第4章 精霊

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

89/98

10.転生したレオナール

 異世界で聞くとは思いも寄らなかった懐かしい名前、レオナール。


 それは、レイアにとっては同級生の、原島レオナールだ。


 フランス生まれで金髪(へき)(がん)、在日十年で(りゆう)(ちよう)な日本語を操る彼は、小説が大好きだった。


 同じ趣味を持ち、同人誌即売会から仕入れてきた本で、ゆみちんと一緒によく盛り上がったもの。


 記憶の引き出しから(あふ)れてくる映像に浸っていると、彼と交わした会話まで(よみがえ)ってきた。



「ああ、転移魔法が使えたらなぁ。別の店までひとっ飛びに行けるのに」

「魔法使いになりたいんだ」

「いや、なるなら精霊使いだな」

「精霊使い? なぜ?」

「だって、精霊ってめちゃくちゃ強いんだぜ」



 そうだ。この会話の後、精霊について議論を戦わせ、喫茶店を出てから少しして、前世の記憶が途絶えている。


 自分とゆみちんは、交通事故で死んで、この異世界に見習い精霊として転生した。


 一緒に歩いていたレオナールがどうなったかは分からなかったが、レオが思い出してくれた夢から推測して、彼も事故に遭って、転生してレオになったのだろうか。


 いや、レオに乗り移ったと言った方が正しいのかも知れない。


「『れおなーるだ』っていう、ぼくがいて、『ちがうよ、レオだよ』っていう、ぼくがいて。へんだよね、こんなゆめ」

「ううん。変じゃないよ」

「そうかなぁ……」


 レオは、唇を閉じて、フーッと鼻で息を吐く。


「夢は、前から見るの?」

「ちがうよ。さっき、みた」


 これで、レオナールが転生して赤ん坊からスタートした可能性はなくなった。


「姫とゆみちんと、どんなお話をしたの?」

「よくわからない。ことばが、わからないから」

「例えば、どんな言葉?」

「うーん……。わすれちゃった。ごめんなさい」

「ううん。いいのよ」


 笑顔から真顔になったレイアは、苦悩する。


 目の前にいるレオが、原島レオナールの転生後の姿に見えるからだ。


 彼とこの異世界で一緒にいたいと熱望するが、それには、二者択一を迫られることになる。


 ヨーコとの契約の約束を果たすべきか。十年間待って、晴れて十五歳になったレオと契約すべきかだ。


 堂々巡りから抜けられず、頭の中がジーンとしてくる。


「ねえ」


 まだ話の続きがあるレオが、心ここに在らずといった(てい)のレイアの方を向いた。(もち)(ろん)、レオにはレイアの姿は見えず、声がする方向を向いただけだが、彼女をドキッとさせるには十分だった。


「何?」

「なまえ、もういっかい、いって」


 さっき、言ったはずなのに、もう忘れたらしい。でも、レイアは、優しさを込めて名乗る。原島レオナールへ語りかけるように。


「レイア。レイア・マキシマよ」


 突然、レオが驚いた様子で、目を見開いた。この反応に、レイアまで(きよう)(がく)が伝染する。


「おかおを、みせて」

「――――」

「せいれいって、ひかりをだせるよね? ねえ。おかおを、みせて」


 レオの姿にレオナールを重ねるレイアは、ブルッと震えた。でも、今の自分の顔は、彼から「姫」と呼ばれていた前世の顔とまるで異なる。同じなのは、黒髪ロングヘアだけだ。


 レオがレオナールの声で「()いたかった」なんて言うはずはないが、(まん)(まん)(いち)、言ったらどうしよう。そんな馬鹿な、あり得ない事だ、と笑い飛ばせない。現に、こうして異世界で奇跡的に出逢っているのだから。


「ねえ。だめ?」

「ううん。待ってね」


 落ち着け自分、と言い聞かせるレイアは、火の魔法で、右の(てのひら)(ろう)(そく)の炎に似た光を出現させた。弱い光でも、闇の中に現れた光は、顔を映すには十分な役目を果たす。


「これでいい?」

「――――」


 真顔のレオが食い入るように見つめてくる。その視線が、とてもくすぐったい。数秒後、眼球が動き、視線は顔、首、肩、胸と下に降りていき、また顔に戻る。


 しばらく凝視していたレオは、(かす)かに唇を動かしたかと思うと、みるみる両目に涙を浮かべた。


「あれ? なんで?」

「――――」

「なんで、なみだが、でるの?」

「――――」

「ごめんなさい。せいれいのおねえちゃんが、こわいんじゃないよ。でもね、なみだが、とまらないんだ」


 両手の甲で涙を拭くレオの姿に、レイアも(もら)い涙で視界が(にじ)む。


「なんかね。ぼくのなかで、れおなーるがね、ないているんだ」

「――――」

「かなしいんじゃないんだって。うれしいんだって。それで、なみだが、でるの」

「夢の中のレオナールが?」

「ちがうよ。ゆめのなかじゃない。いま、れおなーるが、ぼくのなかに、いるの」


 レオは、「ここに」と言って、右手で掛け布団の上から心臓の辺りをポンポンと(たた)いた。


 今、レオの心の中にレオナールがいて、(うれ)(なみだ)を流している。そう思っただけで、レイアの涙腺は崩壊し、涙は(ぼう)()と流れ落ちる。


「なんで、うれしいんだろう? へんだよね? はじめて、あったのに」

「ううん。違うと思うの」

「なんで?」


 頬を左手の甲で拭ったレイアは、レオに顔を近づける。


「昔、どこかで、会ったことがあるのよ」

「ほんと?」

「うん。きっと、そうよ」

「ぼく、おぼえていないよ。ごめんなさい」

「ううん。大丈夫。謝らなくていいわよ」


 レオは、涙で頬を()らすレイアが笑顔になったのを見て、手の甲で涙を拭いてニッコリと笑った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー cont_access.php?citi_cont_id=355503857&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ