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精霊に転生した女の子は見習い精霊から精霊王を目指す(前編)  作者: s_stein
第4章 精霊

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2.再会

 エルザとレイアとシュミットは、大勢の人々の視線を振り切って城郭都市を後にすると、広がる青空の下、爽やかな風に運ばれる鳥のように滑空する。


 ところが、途中でどういう訳か、エルザが高度を下げた。(のど)()な田園地帯の風景を間近で楽しむ訳でもないだろうが、レイアとシュミットも黙ってそれに従う。三つの影が牧草地を滑り、草を()むたくさんの羊や馬は何事かと顔を上げ、彼らにとって不思議な飛翔体を見送った。


 彼らに別れを告げたレイアは、エルザの進む方向に見覚えのない景色が広がっている事に気付く。そこで、行き先を告げずに飛び出したエルザに目的地を確認しようとレイアが速力を上げると、急にエルザが下降した。白猫がジャンプして目一杯体を伸ばした格好のエルザが向かう先を目で追うと、割と大きな林がある。


 林の中心付近に着地して落ち葉を舞い上がらせたエルザが、初めて後ろを振り返り、当然付いて来るはずの――と本人は勝手に思っている――二人を確認する。気ままな行動を取る人造精霊の(まな)()しに迎えられて、レイアもシュミットも、落ち葉のクッションへ膝を曲げて着地した。


「白の――」

「マナを補給するわよ。さすがに疲れたわ」


 何をしにここへ来たのかという質問を遮られたレイアだが、エルザが口にした理由を聞いて()に落ちた。これで、高度を下げた事情も納得出来る。さらにエルザが「疲れた」という言葉を使った事に新鮮さを覚えた。精霊界と比べてマナが少ない人間界でも、平気で動き回るタフなエルザだが、限界があるのだと納得し、シュミットの方を向く。すると、彼も「その方が助かる」と()(いき)を吐く。どうやら、こちらもバテてきたようだ。


 それに対して、自分は全くマナ不足を感じない。「あなた達、しっかりしなさいよ」とエルザ風に言葉をかけたくなるほど、元気なのだ。


「レイアは、大丈夫なのかい?」

「ええ、全然平気です」

「へー、驚いた。こう言う時って、前にも聞いた気がするけど、レイアの元いた世界ではなんて言うんだっけ?」

「恐れ入谷の()()()(じん)です。恐れ入ったでもいいですが」

「おそれいり、いり、なんだっけ?」

「恐れ入谷の鬼子母神」

「ちょっと、あんた。そいつにいくら教えても、右から左に抜けるわよ。そんなこといいから、あんたも休みなさい」


 そう言って、エルザは香箱座りをして目を閉じたが、レイアは「うるさくするな」と遠回しに言いたかったのだろうと解釈して(ほほ)()む。


 木がまばらの林に差し込む陽光は暖かく、ポカポカ陽気にエルザはすっかり寝込んでいるかの如く見える。球体の結界で包んだフリーダを右肩に乗せたままのシュミットも体育座りのまま、膝に額を押しつけて、こちらも寝ているように見える。しかし、精霊は眠りに就くということはない。単に、マナ不足でフラフラしているだけなのだ。


 元気(はつ)(らつ)のレイアは、暇を持て余して、付近を散策する。


 始めは、すぐにエルザ達の所へ戻れる距離の範囲で行動していたが、なかなか動こうとしない彼らを見て、かなり時間が掛かるのだろうと思い、遠くまで足を伸ばした。


 感覚的に、歩いて七、八分くらいの距離まで進んでみると、林の外へ出てしまった。そこには直径三十メートルほどの丸い池があり、周囲に膝丈を越える高さの雑草が生い茂っている。池の対岸では、雑草の隙間からスミレ色と桃色の花が乱れ咲き、風に揺れていた。


()(れい)……」


 レイアは、グルリと池を反時計回りに歩いて、花へ近づくと、雑草以上に揺れている花がある事に気付いた。


『精霊の気配がする』


 嫌な予感がしたレイアが足を止めた途端、異様に揺れる花の近くから、()(えん)(けい)で少々土に汚れた白い毛玉がフワリと浮かび上がった。


 金色の目がこちらを見ている。耳はない。鼻も口も毛に隠れていて見えない。前足も後ろ足もない。この、目だけあるラグビーボールみたいな毛玉を目にしたレイアは、警戒が吹き飛び、懐かしさが込み上げて来た。


「――もしかして、白のクルツさん!?」


「そう言うお前は、レイアか?」


「はい! レイアです!」


 レイアは満面に笑みを浮かべて両手を広げ、花の上に浮き上がる毛玉へ突進した。

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