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うちあけ

挿絵(By みてみん)

御守みもり 愛未あみ

中一のときからの忍の知り合いで、しっかり者の普通の子。忍をちゃんとした子にしようとしていたが、クラスも変わり、半ばあきらめている。


画風があっちゃこっちゃでとっ散らかっててどうもねぇ。

そのうちまとまった挿絵を描きたい所存

月曜日の放課後。

6月も中盤になると尋常じゃなく暑い日がたまにあった。

今日は先週以前とは違って、お隣がずっと絡んできた。

「由羽~暑いよ~」

「いいのか~帰らなくて~」

俺は家に帰って何しようかとぼーっとしているが、こいつは……?

「足が蒸れるよ~」

「一人で静かにさせてくれ~」

頭の上に顎が載せられ、首の横から腕を通された。

「由羽は暑くないのか~」

「今ちょうど暑くなったとこ~」

見ようによっては、というか普通に抱き着かれているが距離感バグってるのか?

「んわ……由羽、暑苦しー」

「こっちのセリフだ。いや、重いし。どいてよ」

「重くないよー。多分」

誰も得をしない無駄に暑苦しいやりとりをしていると、

「おーい、忍ー?え?あ、お邪魔し」

「あー愛未~?ハローハロー……こっちきていいいよ~」

あれ、愛未だ。この子は俺のことを女だと思っているんだった。

あ、どうしよ。

「いいの?じゃ、念のため閉めとくけど……」

待てよ?そもそもこの子に性別を偽る意味はないんだ。

静さんみたいに男嫌いじゃないはず。

「えっと、その子は?」

「あ、愛未……由羽だよ。憩 由羽。

 一緒にFFBRやったでしょ」

「え?えええっ!?男だったの!?

 だって遥ちゃんはお姉ちゃんって……」

「ぷふっ……」

忍が思い出し笑いをしている。

「ああー、あれは妹が気を使ったというかいたずらというか……

 とにかく俺は普通に男で、兄」

「そうなの?で、暑くないのそれ?」

「暑い」

「暑苦しい」

とりあえず忍には戻ってもらって、女装していた経緯や静さんの前では女として振る舞うことなどを話した。


「忍、変な子だから迷惑かけたねー。これだから私以外友達出来なかったんだけど、こっちで由羽が仲良くしてくれてありがたいよ」

「親かよ!」

突っ込める立場なのかこいつは。

「まぁ、俺も一人だったしちょうどよかったよ。」

「人肌恋しかった?だからさっきあんな事してたの?」

ニヤニヤしながら聞いてくる。

「それは忍が」

忍が割って入る。

「愛未にもしてあげよっか?」

「うーん、寒くなってきたら考えとく。」

「由羽には勝手にやるからね」

「冷房が強い時以外やらないでくれ」

「遠慮しなくていいのに」

いつも寝ていた時間が雑談タイムに変わってしまったが、これもこれでいいか。

家に帰ってからはFFBRをするというのがルーチンとなった。


それからはあっという間に土曜になって柚飛家に集まることとなった。

「お姉ちゃん、下着これつけてってよ。」

支度中に遥に言われる。

「えぇ?まだ言ってんのか」

「だって静さんもそうだけど、男のパンツなんて見たくないと思うよ?」

「いや、俺が履いてたら同じ……まぁいいか。不便になるわけでもないし。」

ふわふわした生地で何とも違和感がするが、そのうち慣れるだろう。

事実、今履いているスカートの感覚にはほとんど慣れてしまった。

「髪の毛整えてあげるからそこに座ってて。」

「自分のはいいのか?」

「私はこれが好きだからいいの。」

ちょっとハネすぎな気もするが、普通の範囲内か。

「それと、一人称も気を付けてね」

「うーん……今まではどうだったか。一応気を付けるよ」


着いて早々、「柚だ」と立ち尽くしていた遥を連れて柚飛家に入る。

「お邪魔しまーす。」

「おおー!遥ちゃんだ!由羽もおはよー!」

テンション高いな。

ノースリーブに短パンは……おっさんのファッションじゃないのか。

ビール腹じゃないと違和感が、じゃなくて。

「忍さん初めまして。ゲームのときの声と見た目の印象結構違いますね。」

若干引いてるし。

「そうかい?ほい、上がって上がってー」

机の上にある紙を静さんと愛未が読んでいた。

「こんにちはー」

「由羽ちゃんと遥ちゃん、いらっしゃーい」

「何してるんですか?」

スカートの裾に気を付けながら座る。

「大会の説明とかが公式にアップされたから読んでたの」

愛未は静さんと仲がいいのだろうか。

「はいこれ。紙を一枚ずつ渡された。」

挿絵参照挿絵(By みてみん)

「ということでいろいろ相談しようかと。」

忍が座りながらしゃべる。

胸元が危なっかしいのだけど。

「まずこれなんだけど、8月1日から31日まで宿泊していただきますって書いてあるけど三人は大丈夫?」

「私はちょっと聞いてみないとわからないですね。」

愛未が言う。

「うちは親がほとんど家にいないし、私たちが出かけてても変わらない気がするよね。

 どう?お姉ちゃん?」

「まぁ、毎年家で暇してるだけだしいいって言ってほしいけどね」

「そこは保留ということで、VRの機械は会場で用意するらしいんだけど練習用に欲しいよね?

 由羽ちゃんにはうちから一つあげるつもりだったけど」

「私持ってますよ」

「え、持ってんの」

遥はいつ買ってたんだ。

俺が驚きだ。

「たまに小学校の友達とやってたけど、結構みんな持ってるよ」

「時代だなぁ。愛未は?」

「今日、親と相談して大会に出られるなら買おうかなって。」

「愛未はいろいろ保留ね。よし、作戦会議でもしよっか。」

その前に言わないといけないことがある。

「あ、ちょっと言いたいことが……」

本気でやるなら俺がスナイパーをやるのはダメだ。

「私、役職を変えたいんだけど……」

「スナイパーは嫌と。まあ確かにね」

何度も一緒にやった忍ならわかるだろう。

「あ、私が変わるよ」

「いいのか、遥?ヒーラーだっけ?」

案外早く話が決まりそうだ。

「自分で選んでおいてなんだけど、攻撃できない役職なんて面白くないし」

「じゃ、交代ってこと?」

「私はそれでいいけど、お姉ちゃんはヒーラーでいいの?」

「やってみて決めるよ」

ということで遥がスナイパーをすることになった。

「ちょっかいかけるの楽しそう!」

性格ピッタリじゃないのか。


結局戦う時の基本の陣形は、

前衛:タンクの愛未と戦士の忍

中衛:ネクロマンサーの静さん

後衛:ヒーラーの俺とスナイパーの遥

となった。

「ただ、常にこの体制で戦えるわけでもないし、急に戦う時は近い形で」

ということを静さんが付け加えた。

大体の作戦会議は終わったが、適当にいろいろ話していたところで、ふと見えてしまった。

忍を部屋の外に連れ出す。

「ちょっとちょっと!なんでつけてないの!?」

自分の胸に手を当ててジェスチャーをする。

「え、だって由羽のとそんな変わらない大きさだよ?」

肩紐をずらそうとする忍の手を止める。

「いやいや、見せなくていいから。男相手だぞ?」

「由羽は女の子でしょ?

 そうじゃなくても、由羽になら見られても何とも思わないよ?」

「は、はぁ……」

どうしてこうなのか。

「そういえば、今日はピンクなんだね。可愛いよ」

!?

……もうどうにでもなれという気分だった。

ここまで来たらとことん、貫こうじゃないか。



15時からVRモードができるということで、遥と忍と静さんがまずプレイしてみることになった。

いったん俺と遥は家に帰ったが、愛未は忍の家で観戦するらしい。

長い夏の始まりだった。

「そういえば、なんでまだVRのバトロワってないんだろうね、お姉ちゃん?」

「家では兄だぞ、遥。FFBRならあるだろ?」

「いや、現実での話だけど」

「現実?何の話をしてるんだ?」

「お姉ちゃん、カン鈍いね」


次回「ばとる」よろしくお願いします!

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