せんたく
本話から登場する由羽の妹の遥です。
いたずら好きで兄についついちょっかいをかけちゃうけど、家族として兄のことが好きで心配してる子です。
今回はうまくかけた気がします!
絵が。
いつになったらまともにゲームするんですかこの子たち……
あとちょっとなんでしばしお待ちを
FFBRのVRモードのベータテストの実施というお知らせが表示されていた。
期間は一週間後から。
7月のリリースの前から調整しておきたいようだ。
また、8月に開かれる大会もVRモードでの開催になるため、参加予定者は準備しておくことだそうだ。
静さんは大会に参加する気満々だったし忍もやりたがるだろう。
となると、俺を入れて3人だからあと二人か……
そろそろ時間だしログインしておくか。
昨日と同じロビー画面が現れる。
忍のキャラが画面にはいってきた瞬間
「大会出ようよ!」
だ。
やっぱりそうだよな、と思いつつ、
「俺は別にいいんだけど、いいのか?俺なんかで。
3人だから足りないし。」
「そこは私が入るからあと一人になるかな~」
ロビーに入ってきた大きな盾を持った小さめの女の子が話す。
おそらく愛未という子だろうか。
「はい。ということであと一人なんです。」
エッヘン。とでも聞こえてきそうな忍の声。
別に忍が偉いわけではないが。
「あ、そうだった。私の本名は御守愛未って言うの。
私は普通だから安心してね?」
「どうやら誰かが普通じゃないような言い方だけど?」
「さぁ?誰のことだろう」」
「憩 由羽です。実は忍とは昨日初対面で、まだお互いよくわかってなかったり」
「そうなの?の割には仲いいけどね」
「私も由羽も「普通」じゃないからね~」
「お?喧嘩か?買うけどやるか?」
画面越しではできないが。
「はーいはい。なんでもいいよ。早くやろやろ」
今回は静さんの不在で攻撃が難しく、とにかく敵に負けまくった。
「泣きたいよー!」
愛未が音をあげている
というより、俺の攻撃が当たらなくて、が正しかった。
スナイパーは向いてないのかもしれない。
「あの……」
と言いかけたその時
「お姉ちゃーん、誰と話してんのー?」
妹の声が聞こえてきた。
しかし、我が家に姉はいないのだけれど。
俺のことを女だと思っている愛未が聞く
「妹?呼んでるみたいだけど」
姉って誰のことだ?
もしかして、女装している俺に、女になりきれというのだろか。
それともお得意のいたずらか?
いや、この際むしろ都合がいい。
「クラスメイトー!」
「へー。それなんてゲーム?」
「FFBRっていうバトロワの」
いつの間にか後ろからのぞき込んでいた。
「やっぱり女の子って設定で通してるの?『お姉ちゃん』」
耳元でささやかれた。
前言撤回。
全部お見通しか。
「後で事情は説明するから今は、な?」
なんとか送り返した。
「私のと一緒に服、洗濯しとくからね。」
「ありがとー。頼んだ。」
出ていく時にわざと二人に聞こえるように付け加えていった。
「プレゼントしてあげた下着、使ってもよかったのに。まあいっか。
せっかくだからいつか使ってね」
「なっ、おま」
ヘッドホンから物凄い爆笑が飛んできた。
いや、まぁそりゃそうなるわな。
逆の立場なら俺も笑うしかないわ。
「なんで忍そんなツボに入ってんの?なんかおかしい?」
愛未が不思議そうだ。
この子は唯一の良心だ。
しばらく笑い転げた後
「ふぅー……いやー、ごめんごめん。
大丈夫、大丈夫。ふー……ふふっ」
「えーっと、きっと姉妹でそういうことするって発想がなかったから、とかじゃないの」
フォローになってない。
「ふーん?」
しばらくはそのままゲームを続けていたけれど、気持ちは上の空だった。
結局、一度もトップを取れないまま終わってしまった。
「由羽、もっと当てれるように頑張らないと!」
忍に励まされる。
「ごめんごめん。もうちょっと練習しないとね。結構難しい」
「そうだ!いいこと考えた!」
愛未が急に大きな声を出す。
「ほぅ!?と言いますと!」
「由羽の妹さんを入れれば大会に出場するための5人が揃う!!」
「おーー!!それはいい考えです愛未先生!!」
「いやいやいや、あいつゲームはそこそこやるけどどっちかっていうとRPGとかそっち系だし...」
と話していると
「お姉ちゃんFFBRやろ!!」
本日2度目の登場もとんでも発言と一緒だ。
「ほら、妹さんもこう言ってることだし!」
「由羽の妹かー、会ってみたいなー」
とかなんとか言ってる。
「もしもし妹や。」
「なんですかお姉さん」
「今さっき、大会に参加しようって」
「5人必要で今4人揃ってるんでしょ?聞こえてきたけど?」
「えっ」
「私耳いいから聞こえるよ。隣の部屋って言ってもドアないし。」
一軒家ではないから広くもないし、多少聞こえているとは思ったけれど筒抜けだったのか。
「はい!というわけで姉ともども、よろしくお願いしまーす!」
俺のヘッドセットについているマイクを使っているため、めちゃくちゃ顔が近い。
というか、吐息が頬にかかってくすぐったい。
「テンション高いねぇ君。名前はなんていうの?」
忍とはなんとなく気が合いそうだ。
「憩 遥!中2です!
一緒にゲームしましょう!!」
「お!いいね!来週うちに集まれるひとー!」
「はーい!」
愛未と遥がハモった。
だめだこりゃ。
「お姉ちゃんも、ね。行こうよ」
「分かったけど遥。ちょっと後で話が。」
ということで各々自己紹介を軽くした後、来週、柚引家に集まることが決まって今日はお開きになった。
いつもの2人の静かな家だ。
春香が神妙に切り出す。
「お兄ちゃん、去年ずっと1人だったでしょ?あの2人、ちゃんと仲良くしてくれてるし、いい人たちじゃない。」
「いや、あの、そんなことよりも」
「分かってる。忍さんがお兄ちゃんの女装に協力してて、愛未さんには女の子だと思われてるんでしょ?」
「あ、うん」
完全にペースを飲まれた。
「だから、私たちは姉妹です」
「は?」
「とりあえずはそうしたほうが都合がいいでしょ」
頭がいいんだか悪いんだか。でもこれが今は一番な気がする。
「まぁ、しばらくはそういうことにしておくか。」
「去年、お兄ちゃんずっと暗かったからさ。今日帰ってきた時に明るい顔で帰ってきたから、私嬉しくて。」
泣きそうだった。
妹にこんな気を使われるなんて、情けないな、俺。
「今日一緒に寝ていい?あ、女の子用のパジャマ貸すよ?」
「一緒に寝るのはいいけどパジャマはいらない」
「私たち姉妹だよね。兄妹じゃないよね。
嫌だなー。男物のシャツと半ズボンで寝るお姉ちゃん」
ちょっと膨れた顔で言われる。
「分かった。わかったから。」
こう言う時に断れる性格だったらなぁとは思うけれど、今は従っておこう。
こいつなりに色々考えてくれてたみたいだし。
「よし。じゃぁご飯食べたら色々教えてね。」
その日はピンクのパジャマを着て寝た。
なんかパシャとか聞こえてきた気がするけど夢だろう。
多分。
そうであってくれ。
「遥ちゃん、由羽って家だとどんな感じなの?」
「可愛いお兄ちゃんって感じですかね?2歳しか歳が違わないから結構友達って感じ?」
「ほうほう。で、女装したお姉ちゃん見たときはどうだった?」
「うーん。まだまだかなぁって。でも、そこは私が何とかしますから!」
「頼もしいねぇ妹君」
「任せてくださいお兄様!」
次回「うちあけ」よろしくおねがいします!