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へんしん

挿絵(By みてみん)


3人の衣装はこんな感じのイメージでした。

左から職業で、精霊使い、スナイパー、戦士って感じです。

各耽美に絵柄がぶれるの、どうにかしたいんですけどね~

足の間を風が通り抜ける。

そういえば、服は静さんのおさがりである。

そもそも今日一日だけ女装してやったら画像は消す、という約束でついていったのにこれでは完全に友達付き合いになってしまっている。

しかも、静さんには性別を偽ったまま。

今日一日でいろいろなことが起きすぎている。


夜8時というのは、暗くて自分の姿が見えないのはいいものの、少しの不安はあった。

しばらく歩いていると、

「わっ!」

後ろから小さな声で脅かされた。

忍だった。

「これ忘れもの」

はいっと俺の制服を返される。

そういえば完全に忘れていた。

もう一つ、さっき疑問だったことが。

「わざわざありがとな。あと、ちょっと聞きたいんだけどいいか?」

「何?」

「おまえ、さっきなんで不機嫌だったんだ?」

しばらく黙っていたが、少しずつ何か聞こえてきた。

「私のお姉ちゃん……由羽に取られそうだったから……もう夜も遅いから帰るね!」

恥ずかしそうにもごもご言った後急いで帰っていった。

やっぱり変な奴だ。

でも、今まで明白な悪意を向け続けられた俺にとっては忍の態度は天使のように思えて来る。

道は暗い。

家は意外とすぐ近くだったのですぐに着いた。

あまりこの格好でうろうろしたくないので、そそくさと家に入る。

妹はこの時間、ほとんど自室にこもっているし、両親はともに仕事でいない。

夕飯と風呂を済ませてのんびりした後パソコンで、さっき聞いた名前を検索した。


『Free For Battle Royal』


メモしたパスワードを入れログインした。

少々の演出があった後、ロビー画面というものが現れた。

どうやら真ん中にいるどう見ても女のキャラが自分のキャラらしい。

何も説明を聞いていなかったので何をすればいいかよくわからない。

しばらくすると、杖を持った静さんに似た女性が画面に現れた。

「ハロー由羽ちゃん!ログインしてくれたんだ!」

静さんの声が聞こえてきた。

「テ、テンション高いですね」

「だって、妹の友達と一緒に新作のゲームができるなんて、楽しみで仕方なかったし!」

「あれ、忍も来るんでしたよね?」

「んー、今風呂から上がったとこだからもうすぐ来ると思うよ」

忍は今……

変な妄想をしかけたが、画面の端にあるボタンの話題を振って心を落ち着かせた。

「この、VRモードってなんのモードなんですか?」

「まだベータテスト初日だからVRはできないんだけど、すぐにできるようになるはずだよ。

 うちで一個余ってるから貸そうか?」

「え、いいんですか?」

「壊れた時用に予備でもう一個買ってあった新品だから安心して!」

「そ、そんなもの、いいんですか?そんな親切にしていただいちゃって……」

「いいのいいの!布教用だと思ってるから。楽しかったらまたこれからも一緒にやってほしいし!」

とんでもなく優しい人だ。

「お姉ちゃん、もうやってるの?」

扉越しと思しき声が聞こえてくる。

大きな剣を持った、男だか女だかわからないキャラが画面に増えた。

「あ、由羽のキャラかわいい!」

これは、なんて返せばいいんだろう。

「忍のキャラもか、かっこいいよ?」

「わた…俺のかっこ良さに惚れんなよ」

……

「静さん、どうやって進めるんですか?」

「無視か……いいだろう。始まったら実力をわからせてやる」

「準備開始ってボタンを押して!ちょっと待ったらマッチングが始まるから。」

画面にパッと、大きな竜の背中に乗った三人の景色に変わった。

「さて!二人は初心者だからなるべく人のいないところに下りないと」

山の中にある森のような場所に降り立ったあと、静さんに操作方法などいろいろと教えてもらった。

「5人用のゲームって聞いてたんですけど、なんで今3人なんですか?」

さっきから疑問だった。

「3人で戦う部屋と5人で戦う部屋があって、大会では5人参加者を集めた戦うの」

「なるほど」

「お姉ちゃん、私も一つ質問。あそこに敵がいるみたいだけどどうすればいい?」

「えっ」

ピンがたてられた。

「よし。こっちに気づいてないみたいだから由羽ちゃんの一発から始めよ」

「狙撃ですね!が、頑張ります」

3人歩いていた中の三人目の頭を狙った弓はその後方に落ちた。

ハチの巣をつついたようなというか、こちらに対して警戒した雰囲気になる。

「弾が到着するまでに時間がかかるから、相手のちょっと前に撃たないと」

静さんの周りには大きな蜘蛛や骨ばった狼などが出てきている。

「相手がこっち来てるよ!」

忍の声。

「由羽ちゃんは私の後ろから敵を撃っててね!」

蜘蛛や狼と一緒に忍が走っていく。

自分も足を引っ張りたくない。

今度はこっちに向かってくる一人の、動いている少し先をねらって撃った。

今度は相手の目の前に落ちた。

悔しい。

「一人ダウン!」

忍と蜘蛛が一人倒しているようだ。

狼はどこに行ったのかわからないが、静さんが二人を同時に相手しているように見える。

次は当てる。

壁から敵が顔を出してきた瞬間、頭を狙って撃った。

ダッ、キュイン!

気持ちのいい音が聞こえて弾は相手の胸付近に当たった。

そのまま、敵プレイヤーがダウンしたという表示が見えた。

初めて自分も役に立てた気がした。

緊張して震えた声でさっきの忍の言葉の真似をする。

「一人ダウン……?」

「ナ~イス!」

「ナイス~」

二人からほめてもらえてうれしくなり、そのまま最後の一人に狙いを向ける。

と、狙っていたら相手の背後から狼が突進し、最後のひとりも倒れた。

どうやらこちらの勝ちらしい。

「楽勝だったな~」

という忍のHP表示は赤くなって残り2割ほどになっている。

「かなりギリギリじゃないか?」

調子に乗った俺は偉そうにイジる。

「ふっ、前衛なんてこんなもんよ。突っ込んでなんぼ」

回復アイテムを使いながらかっこよく返された。

「由羽ちゃんナイスダウンだったよ~」

「え、へへ…ありがとうございます」

とても楽しい時間だった。


そのまま二人がほとんどの敵を倒して一戦が終わった。

ロビーに戻り、少しテンションが下がった声で話していると、

「あ、役に立てなかったなぁとか思ってる?気にすんなよ?

 最初から強い奴なんていないんだから。」

「で、でも…」

「むしろ一人倒したんだから、その感覚を忘れんなよ?」

「……ありがと

何だろう。

もしかして、忍ってすごくいいやつなんじゃないだろうか。

ゲーム中の言葉遣いはおかしいが。

ん?忍って初心者じゃないの?」

「他のバトロワならやったことあるし、周りもみんな初心者だからまだ戦えてるだけ」

「さて、なんだかんだもう11時だからそろそろ寝ましょ」

三人ともログアウトし静かな部屋が戻ってくる。

しばらくするとスマホの通知が鳴った。


柚飛忍

「明日、一緒に服買いに行くから10時にうちに来て!」


登録した覚えのない名前からの通知だった。

いつの間に登録し…

気絶してたときに勝手に追加したのかあいつ。


中学でスマホを買ってもらってから、家族以外の初めての連絡先だった。

小学校以来初めての友達か……

少し悲しくなると同時にうれしかった。

感傷に浸って返事を忘れていると、もう一個メッセージが届いた。

「これからもよろしく!」

と同時に忍の部屋で勝手に撮られていたであろう、俺が静さんの服を着た写真が届いた。


「お、その子誰だ?結構かわいいな。こっちこそよろしく」

と返した。


一日が楽しかったと思えるのはいつぶりだろう。

明日は服を買いに行くらしい。

何着ていこうか。


「お姉ちゃん、FPSめちゃくちゃ強いから大船に乗った気でいるといいよ!」

「そういえば、大会がどうとかって言ってたような……」

「5人そろったら出たいって言ってたけど」

「ま、マジか……」

「でも一緒にゲームしてくれる友達探すのって結構大変だからね~」

(友達が一人もいないんだけどな)


次回、「きりかえ」よろしくお願いしまーす。


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