美しいものだけのセカイ
美しいものしか要らないと、誰かが言った。
或いはそれは僕だったのかもしれない。
美しくない自分は要らないと、あの人は言った。
世界に美しいあの人は欠かせないと、僕は思った。
醜い自分は要らないと、僕は言う。
あなたの美しさはわたしに必要だと、誰かが思った、かもしれない。
砂泥は雨後に浚われ、清涼な空間を演出させられる。
そこにあるべき煩雑な粒子が放っていたあの光を返してくれ。
水面に反響する羽音の主は姿を捉えること叶わず、しかして揺れる波紋に存在は示唆される。
影は要らない。姿を見せるな。いくら願えど飛び立つ姿をこの眼は捉えた。
あの人が美しいと拾いあげたソレを、僕は直視できなかった。
僕が美しいと感じたソレを見て、あの人は顔を歪めた。
誰かの美しさに塗れたこの世界は、いつだって醜い。
僕の感性に抽出されたこの世界は、誰にも相応しくない。
あの人の拾った欠片を接いだ世界は、どのように見えているのだろう。