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悪役腐令嬢様とお呼び!  作者: 節トキ
アステリア学園中等部一年
67/391

腐令嬢、宣言す


 週が明けると、いよいよ待ちに待った部活動申請許可が下りた。


 私達の活動拠点に与えられた部室は、イリオスとの密会に使っている音楽室があるのと同じ旧棟の一部屋。前年度に部員が全員卒業して廃部となった『フリルなでなでしよう会』の跡地だ。


 元は進路指導室だったそうで、それほど広くはないものの室内は綺麗で、テーブルや椅子も揃っていた。


 そこに『萌えBL愛好会(仮)』のメンバー、そして部活動開始初日ということで引きずって連れてきたサヴラ組のトリオを着席させると、私は高らかに宣言した。



「では本日より『花園の宴 紅薔薇支部』、活動を開始いたしまーすっ!」



 部長となった私の挨拶が終わると同時に、盛大な歓声と祝福の拍手が室内に響き渡った。


 そんな中でただ一人、サヴラだけが、釣られて拍手する取り巻きの二名――確かエイダとビーデスという名前のニ爵家の令嬢達――を見やり、呆れたように溜息をついた。



「それより、ここでは具体的にどんな活動をなさるのか教えてくださらない? 参加するしないは別として、一応は部員として名を連ねているのですから、知っておく権利があると思うのですけれど?」



 あ、そういやサヴラ達には何も説明してないんだっけ。



「現実にいる素敵な殿方のみならず、理想の殿方についても心惹かれる所作や言動などを想像して語り合い、創造力を高め合うのですわ」



 すかさず美しいオブラートで包んだ答えを返してくれたのは、リナール三爵令嬢のドラス。


 お団子にまとめ上げたオレンジの髪と理知的な顔立ちに相応しく、六年の時にステファニが転入してくるまで聖アリス女学院においてずっと主席を誇っていた才女――だが、その頭脳を『攻めと受けという役割がどのような心の動きで転換し、その結果どのような萌えをもたらすか』の計算に費やすことが生き甲斐のリバ好きである。



「つまり好みの殿方を研究して、それに相応しいレディになれるよう女子力を向上する……といった感じかしら?」


「違う、そうじゃありませんわ!」



 異議の声を上げたのは、ブルーアッシュの縦ロールが特徴のマリリーダ二爵令嬢のアンドリア。


 くっきりとした目鼻立ちが美しい顔貌をしているけれど、プライドの高いお嬢様といった不遜な印象を強く受ける。私と同じで、意地悪そうな顔ってやつだ。



「殿方に振り向いていただくのが目的ではありません! ただひたすらなまでに純粋な心で、愛しい人を思い浮かべて幸せな気持ちに浸るのよ! でもそれは、心の中でだけです! そこだけはどうか、誤解なさらないでください!」



 アンドリアがここまで必死になってサヴラに説明するのには、理由がある。彼女はヴァリティタ✕ネフェロ推し。特に左側攻め役固定のヴァリティタお兄様には並々ならぬ思い入れがあるため、その婚約者であるサヴラに『こいつ、人の男に色目使ってんのか?』と思われないよう牽制しているのだ。



「アンドリア様の仰る通りです。心の中のその人は自分だけのもの、自由に想うことは許されるはずです」



 アンドリアに賛同の意を示したのは、元第三王子側近だったステファニ・リリオン。


 彼女は言うまでもなく、イリオス推し……であると同時に、実は江宮えみや推しという理解不能な性癖も持ち合わせている。


 うん……どうして自ら肥溜めにダイブしたんだ、と私も心から思うよ。しかし私が描いた絵をうっかり見て、一目で惚れたというのだから仕方ない。


 ところがステファニは、最推しの第三王子の中の人がこれまた推しの江宮だとは知らない。ステファニだけでなく、前世の記憶があると打ち明けたリゲルにもまだ伝えていない。



 だって……言えるわけないじゃん!



 あの頃の私は記憶を取り戻したばかりで軽く混乱してたし、しかもリゲルのことを江宮なんじゃないかなんてとんでもない勘違いまでしてたから『江宮と友達になりたかった』なんてアンビリーバボーな発言しちまったんだよ!?


 万が一、それが江宮の耳に届いたら『そんなふうに思ってたんですかぁ〜? だったら友達になってあげてもいいですよぉ〜? ただしBLは遠いお空に捨ててきてくださいねぇ〜?』ってバカにした顔で返されるに決まってる!



 ああもう、何であんなこと言っちゃったんだろう……私のバカバカ!!



「あなた、自分がどれだけバカなことを言っているか気付いてます!? バカだと自覚していないバカほど恐ろしいものはないわ!」



 うう、わかってるよぅ。そんなに責めないでよぅ……。



「バカと言う人がバカなのです。つまり、バカなのはあなたの方です」



 もうやめてよぅ。そんなにバカバカ言わないでよぅ……。



「イリオス様を自分のものにしようだなんて! そんなこと、許されるはずありませんわ!」


「あなたなどの許しなど、必要としておりません。それに許可でしたら、ちゃんとクラティラス様からいただいております。」



 そうそう、心の中はリーダム。


 ステファニの心の中では、イリオスが江宮とラブラブチュッチュしてる恐ろしきインェルノな光景が繰り広げられて……って、ん?



 我に返った私の目に、掴み合って罵り合うサヴラとステファニの姿が映る。



「クラティラスの許可なんて、何の役にも立たないでしょう!? 大体この女、自分が第三王子殿下の婚約者だという自覚もないのよ!? バカの中のバカが、権利を振りかざすとロクなことにならない典型ですわ!」


「クラティラス様を侮辱することは、この私が許しません! あなたの許可こそ不要中の不要、ゴミの中のゴミです! いっそのこと、ゴミラ様に改名なさった方がよろしいのでは!?」




 えっ……何これ?

 何でこんなに荒れてるの?



 ちょっと、部活の紹介はどこいった!?


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