腐令嬢、敵わず
私達のクラスによるお化け屋敷ならぬお化け教室『学校の御伽噺』は想像以上の人に訪問していただき、大成功だった。
怖さより幻想的な雰囲気を重視して、登場させるオバケも可愛かったりコミカルだったりと皆に楽しんでもらえるようにしたんだ。お化け屋敷なんだから恐怖に振り切るべきだって反対の声もあったけれど、この路線にして良かった。
てか、怖がり二人に任せたんだから文句言うんじゃねえよ。気に入らねえなら、てめえで作れっての。主に最後までブツブツ愚痴ってたステファニとディアヴィティ、来年はお前ら二人がやれ!
部活の方では、今年は初めて物販をした。
私とイェラノがイラストを描いたポストカード、リゲルのポエムの一節を添えたメッセージカード、裁縫が得意なアンドリアが作った編みぐるみ。トカナはお姉様にビーズ細工を教わったそうで、二個で一組のリングセットを制作した。
中でも目を引いたのは、アウトドア派のミアとドラスが自家製の窯で焼いたカップ&ソーサー。
人外萌えのミアによってカップのフチにちまっとケモミミが付いてるんだけど、これがフチマスコットみたいでとにかく可愛いの! リバ全推しのドラスが手掛けたソーサーは、裏返すと別のデザインのお皿になるっていう工夫が凝らされていて、さすドラ! さすリバ! と感心したわ。
一番人気だった商品は、デルフィンが用意した自作ハーブティーブレンドキット。
数種類のハーブの茶葉を小分け包装にしたもので、それぞれに『大人の色香』『優しい渋みと深み』『時々やんちゃなスパイス』などなど彼女ならではの属性を表現した名前が付けられている。その日の気分や好みや推しカプを想像しながら配合して、自分だけの紅茶を楽しめちゃうんだって!
デルフィン曰く、彼女をオジ受け沼に落とした伯父様がコーヒーの濃さを日によって変えるところを見て着想を得たらしい。デルフィンはいつも流行の最先端を追っていたけれど、これからは流行を作る側になるんじゃないかな?
売れ残ったら自分が全て買い取るつもりだったけれど、嬉しいことに夕方前には全商品完売した。
今年こそ、白百合支部に勝ったぜ! ……とは、しかしながらならなかったのよね。
白百合の奴ら、今回は何とファッションコレクションを開いたのよ。
もちろん、ただ服を飾っていたというだけじゃない。二体ずつの五組、計十体のマネキンに服を着せ、『一人より二人の方が映えるレディースコーディネート』を提案したのである!
しかも時間ごとにこまめに着替えさせて、庶民向けの軽装から豪奢なドレス、付属する靴やら小物に至るまで、幅広いジャンルで展開してというからもう……こんなん敵わねーよ。私も見に行ったけど、マネキンに添えられたポップには互いを際立てるカラーの説明だとか、オススメのメイクまで書いてあって、参考になりまくりだったわ。
あの催し物には、間違いなく副部長のデスリベの力が大きく働いてるな。武闘家目指してるくせに、いちいち女子力高すぎなんだっつーの!
こんな感じで文化祭は終わり、季節はいよいよ晩秋から厳しい冬へと移り変わっていった。