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悪役腐令嬢様とお呼び!  作者: 節トキ
アステリア学園高等部一年
370/391

腐令嬢、夏を振り返る


 夏の一大イベントが終われば、すぐに新学期の開始だ。


 リゲルとステファニには部活で休み中も会っていたけれど、それ以外のクラスメイトや友人達とは一月ぶりの再会となる。


 ディアヴィティは北東部の林にある高級別荘地で優雅に過ごしていたそうで、大したものじゃないけど……なんて謙遜しながらお兄様にたくさんのお土産を買ってきていた。妹の私には何もくれなかった。

 さらにトカナにも、たまたま出先で見付けたとか何とか抜かして可愛い眼鏡チャームをあげてた。部長の私には何もくれなかった。


 何が大したものじゃないだよ! 北東部のリゾート地で有名な、並ばなきゃ買えないって噂の木苺パイもあったぞ!? しかもたまたま眼鏡チャームが見付かるもんか! 一生懸命探しましたってのがモロバレなんだよ!!


 ちょっと日焼けしていたり、夏バテしたのか少し痩せていたり、逆に太ましくなっていたりと些細な変化はあったものの、皆揃って元気な顔を見ることができた。


 その中には、小憎らしいアンチクショーなカミノス様もいる。

 カミノス様は休み中はずっとヴォリダ帝国に戻っていたそうだ。ペテルゲ様はゲームではアステリア王国に滞在して観光やら避暑地に行ったりして過ごすんだけど、今回は問題児な妹君の問題行動の報告と監視のためにご一緒に戻られたという。王宮一日お泊まりからのアダリスきゅんきゅんお披露目イベントにも現れなかったのは、そういうわけみたい。


 そして休み期間中に行われていた、イリオスによる『クラティラス孃のお料理で体を鍛える自由研究』は、驚くほど成果があったようだ。


 被験者達は状態異常魔法に対してのみならず、毒物にも大きな耐性を得たんだと。休みが明けてから、イリオスは直接国王陛下に謁見して秘密裏に報告したと言っていた。

 ステファニとお兄様が書き留めたレシピを手渡したそうで、国王陛下もご自身で毒見係や護衛達に試食させるおつもりとのことだけど……私の料理って、やっぱりすごいのかな? 味見で軽くペロッとしただけで、あまりの不味さに意識飛んだんだけど。

 国王陛下が口にした途端ショック死して、毒殺犯ならぬメシマズ犯で処刑ルートにならないことを祈る!



 さて、休みボケが残暑の名残と共に晴れてきたら、秋の第一弾イベント、体育祭の開催である。


 高等部では中等部と異なり、球技大会がない。代わりに高等部の体育祭は、中等部よりも種目が多く、時間もやや長めに取られている。

 参加競技は選択制で、徒競走や障害物レースといった個人競技、少人数で行う競技、そして団体競技から好きなものをいくつか選ぶ。といってもリレーのような花形競技には希望者が集中するので、そういった場合はクラス会議での多数決や抽選で決めなくてはならないのだけれども。


 リゲルはリレーと騎馬戦とムカデ競争に決定した。ステファニはブリオッシュ一気食い走とかいうめちゃくちゃ楽しげな競技をジャンケンで勝ち取った。

 私は皆に『ダンスには慣れてるでしょ!』って押し付けられた、ドレスステップ走とかいう訳わかんない競技に無理矢理推されたよ……ドレスを着て、規定のステップを踏みながらゴールするんだってさ。超つまんなそー。


 ゲームでも競技を選択して、ミニゲームで楽しく遊んだ。


 ミニゲーム自体は大したことないんだけど、好感度を上げる塩梅が難しいんだよね。イリオス様とディアヴィティはプライドが高いから、活躍しすぎると逆に好感度が下がるの。お兄様も、騎馬戦とか棒倒しとかあまりお淑やかではない競技を選ぶと喜ばないの。

 一番面倒なのが、意外にもハニージュエル、現デスリベ。彼と同じ競技を選ばないと好感度は全く変動しないし、彼より上位でも下位でも好感度が下がるっていう驚きのウザさだったっけ。

 その点、レオとペテルゲ様と、中等部からわざわざ見に来てくれるファルセは、高得点を取れば取るほど好感度が上がるっていう単純仕様で良かったなぁ……。


 しかし、体育祭イベントの目玉はミニゲームで遊んだ競技の数々ではない。そう、ちまちま嫌がらせをしていたい悪役令嬢クラティラスが、ついに本領発揮するシーンがやってくるのだ。


 イリオスは好感度の上下関係なく、何かとリゲルに絡んでくる。攻略対象の一人というだけでなく、ゲームにおける案内人の役目も担っているからだ。

 そのためルート関係なく、人嫌い設定のイリオス様は普通の女の子設定のリゲルに『○○室はあっちだよ』『○○に会いたければ✕✕に行くといい』『悩みがあるなら聞こう』などと親切にしてくれる。


 でも婚約者のクラティラスにしてみりゃ、いい気はしないよね。で、意地悪モードのスイッチが入る。

 誰のルートでも、ラストでクラティラスが死の断罪を食らうのは、イリオスのせいってわけだ。


 それはさておき、試運転だったクラティラスの意地悪モードがこの体育祭で本格稼働する。


 クラティラスには取り巻きがいるんだけど、そいつらに命じて、リゲルに向けて玉入れ用のカゴを倒すという事件が起こるのだ。しかし、リゲルが怪我をすることはない。その時点で最も好感度の高い攻略対象が彼女を突き飛ばし、身代わりとなるからだ。

 そして責任を感じたリゲルが付き添いを申し出て、そこから介抱イベントに……というのが通常の流れなんだけど、相手がイリオス様の場合のみ、悪巧みした張本人のクラティラスが現れる。


 婚約者に怪我をさせてしまったことを悔やみ、ごめんなさいと謝るのかと思いきや、



『庶民如きが何様のつもり!? 私の殿下に気安く触ろうとしないで、汚らわしい! あなたのせいでイリオス殿下はお怪我をされたのよ! 二度と殿下に近付かないでちょうだい!』



 などと罵詈雑言を吐いてリゲルに責任転嫁した挙句、介抱役を横取りするんだよね……。ちまちま嫌がらせしてくる小物キャラって印象が、一気に『邪魔者を蹴落とすためなら手段を選ばないヤベー奴』に変わった瞬間だったわ。乙女ゲームは『アステリア学園物語〜星花(せいか)の恋魔法譚〜』が初めてだったから、悪役令嬢っていう存在も知らなかったし。


 江宮(えみや)も秘密ノートに書き留めてたけど、ここのクラティラスの台詞は私も忘れられない。これが悪役令嬢だ! ってのをドーンと見せ付けた最初のシーンだったもん。


 しかしその悪役令嬢クラティラスに生まれ変わったといえ、私がリゲルにあの辛辣な言葉を吐くことはない。リゲルは私の大親友だってのに、攻撃したり口撃したりなんてするもんか。ケンカしたとしても、影で裏工作して痛め付けるなんて汚い真似しねーわ。


 なので体育祭のイベントは安心安全……と油断してはいけない。


 こちとら、何度も足元をすくわれてるんだ。『世界の力』ってやつが悪役令嬢なんかより性格悪いってことは、よくよくよーく存じておりますからね!


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