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悪役腐令嬢様とお呼び!  作者: 節トキ
アステリア学園中等部二年
145/391

腐令嬢、運搬される


「ロイオン、いい雰囲気になってたよね!」


「ですねぇ、まさか彼がここまでやるとは驚きですよ」


「百合豚族長と変態妄想クレイジージャーニーの愛を、より熱く激しく演出する必要などありませんでしたね」



 ステファニとリゲルの部屋で、私は例の二人の様子について語り合っていた。


 ああ、一人にするなとギャンギャンうるさかったサヴラ様ですか?

 あの方でしたら『ロイオンに教わった美の要素満載の湯にお前が浸かることは許さない』と私を追い出し、現在はお部屋の浴室で美の要素満載の湯とやらを満喫中ですよ!



 そんなわけで私は二人の部屋のバスルームを借り、リゲルに扇子で扇いでもらいながら、ステファニに髪を乾かしていただいてる。


 いやいや、私が『オラ喜べ愚民共、一爵令嬢様の世話をさせてやる!』って悪役令嬢丸出しで命令したんじゃないよ?

 ステファニは家でも『クラティラス様が自分で身支度を整えようとすると毎度ひどいことになる』っつってネフェロやら侍女達と一緒に着替えやら入浴の世話やらしてくれるんだけど、リゲルまで面白そうだから手伝いたいって言い出したの!



 ちなみに浴室は全室完備ではなく、女子の部屋と王子達の部屋にのみ付いている。女子達には元警備隊上官が宿泊する部屋を、王子達には視察に来るVIP用の客室を割り振ったそうで。他の男子達は共用の広いシャワールームを使用するんだって。

 男子の中にはロイオンを始めとする貴族の子息もいるし、思春期という繊細なお年頃というのもあるから、他の者と入浴したくない者は相談して時間をずらすってことにしたようだけど、結局全員で仲良くシャワーしたみたい。


 ほら、このゲームって世界観が超絶緩いからさ……身分が高くても人によりけりって感じで、気にしない奴は全く気にしないんだよね。お父様も使用人達と一緒にサウナに入って我慢対決したり、海外に行ったら政府の要人の方々と楽しく温泉巡りしたりするそうだし。


 そんなわけで第二王子殿下であらせられるクロノも、部屋にバスルームがあるのに『皆とお風呂で遊ぶ〜!』っつって共用のシャワールームに突撃かましたと後で聞いた。あ、弟さんも誘ったらしいけど、扉すら開けてくれなかったって。でしょうねー。



 この世界のアホゆっるーいお風呂事情より、今はロイオンだ。


 もしかするともしかすると、うまくいくのではないか? と我々は大いに盛り上がっていた。



 サヴラが、あんなにも他の者に心を許しているところなど見たことがない。私の個人的感情が視界を歪ませているのかもしれないけれど、お兄様に向けるいかにも作り物といった美しいだけの笑顔とは違い、ロイオンとは心から楽しそうに話していたように見えた。


 本来ならロイオンもお兄様も、目の前で扇子を振りたくながら熱くBL妄想語ってるリゲルに心奪われるはずなんだよなぁ。




 と、そこで――――私は唐突に、ゲームにおける重大な設定を思い出した。




 何でこんな大切なことを見落としていたんだろう?


 ゲームで攻略対象となるお兄様は、高等部二年生の時点で『婚約者がいない』。おまけにサヴラは『本編に出演しない』。


 これはつまり、我々が高等部に上がるまでに『二人は破局を迎える』ことを意味する。



 ゲームの通りに現実が動くのだとすれば、ロイオンは失恋する。けれど、お兄様とサヴラが結ばれることもない。


 何故、二人は別れてしまうのか?


 最悪の予想は、サヴラの『強制退場』。彼女の身に何か起こり、婚約が不可能になるというパターンだ。でもそれなら、ゲームのヴァリティタ・レヴァンタのプロフィールに記されていてもいいはずなんだよね。婚約者を失った心の傷をヒロインに癒されて……となると、ゲームなら必ず美味しい設定になるもの。


 サヴラという元婚約者の存在については、ヴァリティタルートでも全く触れられていなかった。となると、二人は円満に婚約を解消するんだろう。力の弱いレヴァンタ家からはとても申し出られないはずなので、パスハリア側が婚約解消を告げる――と思われるのだけれど。



 もしかしたら、ロイオンが関係してる、とか?



 ロイオンに心惹かれたものの、己の立場を考えたサヴラが泣く泣く彼の告白を断って、けれど結局ロイオンを忘れられず、お兄様との結婚に踏み切れなくなり、無理を言って婚約を取り止める……なんてことも、ありえるんじゃ?



「あ、そろそろバーベキューの時間ですね」


「ええ、出発しましょう。クラティラス様……いえ、変態妄想クレイジージャーニー様もお腹が空きすぎて、頭を持ち上げる気力すら失っているようですからね。リゲルさん、どうか運搬も手伝ってくださいませんか?」


「はいはーい。ほら、クラティラスさん……じゃなくて変態妄想クレイジージャーニーさん、ちゃんと立ってください。ご飯はもうすぐですよ、頑張って!」



 床に頭を押し付けて思案に暮れていた私を、ステファニとリゲルが両脇から抱え上げる。そのまま変態妄想クレイジージャーニーは、バーベキューの開催地である中庭に運ばれた。


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