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088

その88です。

「じゃあ、俺からも質問します」


 泰地は手を挙げず、雪郷の返事も待たなかった。いちいち付き合う気力などない。


「オーリン皇子って人の話だけを聞いて信じるってのは問題じゃないですか? もしかしたら皇子が嘘をついていて、皇帝は止むを得ない事情で協力を拒否しているって可能性もゼロじゃないですよね」


 いーい質問だ、と雪郷が拍手した。


 そして、彼の解答は酷かった。




「うん。正直に言ってしまえば、公安ウン課としてはそんなことはどーでもいい」




 タユーはもちろん、今度は泰地も椅子から転げ落ちてしまう。そんなバカな、なんて言葉も出てこなくなる。


 法治国家である日本の警察が、一方の証言だけを丸呑みして動くなんてあり得ない。これではシュクリ皇帝の所業と同レベルではないか。


 二人が椅子に座り直そうとする様を眺めながら雪郷は言葉を続けた。


「公安ウン課は事件の捜査ができればいい。オーリン皇子はそれに乗じてクーデターを成功させたい。両者の利害は一致したってもんよ」


「いやでも、クーデターに成功した後にオーリン皇子が恐怖政治なんか始めたら」


「それは、繰り返すがどーでもいいんだよ。確かに、我々のガサ入れに乗じて動くって話になってるけど、我々の任務達成と彼らの成功が連動するワケじゃない。クーデター後にどういう政治体制になってるかは分からないが、日本政府と国交を結んでくれるのなら、むしろ現政権よりもありがたいってなもんだ」


 実も蓋もない話だ。正直すぎて開いた口が塞がらない、とは正にこれである。



 確かに公安ウン課は、皇子のクーデターに加担するわけでも、陰ながらバックアップするでもない。ウン課の強制捜査によって起こるであろう混乱を皇子が利用するだけの話だ。


 言ってしまえば、ウン課も皇子も相手が成功しようが失敗しようが関係ない。自分の目的成就が第一なのである。



「まあ、オーリン皇子はクーデター成功後は皇位継承はせず、皇帝の弟だったショウマの息子を皇帝に据えて、自分は若隠居するって宣言してるよ」


 フォローのつもりか、雪郷がぽそりと付け加えた。とはいえ、それを額面どおりに受け止められるはずがない。



 そもそも、現時点で魔王サマがまったく口を挟まないのが不気味である。


本日は、あと2編投稿させていただきます

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