080
その80です。
結局、証拠品の押収と社長の逮捕、そして子供たちの保護で捜査は終了となった。
雪郷による労いの言葉はイラッとさせられたが、マエカケさんの入れてくれた紅茶が霧散させてくれる。
泰地はもちろん、タユーも疲労が相当だったようで、UN芸能事務所の応接セットで半分寝そべるような姿勢になってしまっていた。みっともないと叱られようが、動く気力が枯渇していた。
あ~とかう~などと低い唸り声を漏らす年少組に、雪郷と榊が改めて声をかける。
「いやはや、お疲れちんちん。まさかデビュー直後に爆発に巻き込まれるなんて、特撮ヒーローみたいだなぁ」
「本当、ケガがなくてよかったよ。いくら捜査員とはいえ、学生生活に支障が出ちゃったら元も子もないし」
この二人の温度差は何だろう、と苦笑いしつつ泰地は姿勢を正した。タユーは……ちょっと首を上げた程度。思っていた以上に疲労が蓄積している様子だ。
さて、と雪郷は社長室から持ち出してきたノートPCを開く。
「お疲れちんちんなのでサクッと終わらせるか。あと、報告書は榊が書くから考えなくていいぞー」
わぁい、とタユーと泰地は軽く万歳する。榊には悪いが、今日はもう一秒でも早くお布団に身を委ねたい。
メールを開いたらしいボスは、その内容を素早く一瞥した。
「ぶっちゃけた話、本日の一斉捜査で対象となった組織にまつわる犯罪の大半が判明した。異世界の犯罪組織を通して向こうの女子供を拉致誘拐して、あれこれ非合法なナニをやらかしてたらしいな」
それは予想どおりだ。具体的な例を出さないあたり、本気でシャレにならないような犯罪に手を染めていたと考えた方がいいのだろうか?
気になるのも本心だ。だが聞いたが最後、夜も眠れなくなるほどの後悔が待ち受けている予感が強く働いたので、少年は口を閉ざすことにする。幸い、魔法少女も同意見のようで横槍は入れなかった。
「で、その犯罪組織が根城としている異世界も分かったんだけど……面倒くさいことに、そこは日本との国交がまだ結ばれていない国だったんだわ」