007
その7です。
弁当箱を眺めていても悲しくなるばかりの泰地は、気分を一新させるべく女性陣二人をさり気なく観察することにした。
まじまじと見つめていたら怒られるのは確実だろうけれど、精神的に沈滞気味な今の泰地としては、手っ取り早く癒しが欲しかったというの本音である。
いろはとゲアリンデは、外見だけで判断すれば見事に対照的だ。
一方は丸みを帯びたぽっちゃりさん、一方は食器より重いモノを持ったことのないような細身の体格。だがその中身は、世界レベルに届こうかというアスリートと、毎日鍛錬を重ねていた騎士である。もしかしたら、同年代の男子よりも筋肉量は多いかもしれない。
二人に気付かれていないのをいいことに、泰地は更に失礼な妄想を進める。
(アンケートとかやったら、ゲアリンデは恋人に、いろはさんは結婚相手にしたいって結果になるんだろうな)
モテない男子高校生の勝手な想像なのだが、あながち間違っているとも言い難い。
金髪碧眼美少女のゲアリンデは家事ができる印象は薄いし、いろはのぽっちゃり体型を見た目だけで忌避する価値観の持ち主は少なくないだろう(残念ながら)。
……ゴチャゴチャと考えているが、二人が魅力的な女性であるのは否定しようがないのは厳然たる事実だ。この二人と昼食を共にできるだけでも、泰地の高校生活は羨望の対象となるのではないだろうか。
(ゲアリンデはあの赤い宝玉を着けてないんだな)
ゲアハルトに変装(?)するためのアイテムは、さすがに学校へ持ち込まなかったようだ。目立つ上に必要ないのだから当然の話なのだけど。
そういえば、と泰地はいろはの髪留めに気が付いた。入学直後に着けていたのと同じ和風のものだ。よほどのお気に入りなのだろうか。
(うーん? 今まで女の子のアクセサリなんか気にしたことがなかったんだけど。俺もちっとはオシャレに敏感になってきてるのかな?)
適当なことを考えている少年の頭上で、魔王サマは……大きな帽子を目深に被っており、その表情は窺えなかった。
明日も更新します。